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企業業績の「V字回復」は信用できるか?
好決算続出でも不安を残す“大不況の爪痕”

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第126回】 2010年5月25日
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 2010年3月期の決算発表がほぼ出揃った。その決算の内容を概括すると、電機や自動車などの主力輸出企業を中心に、リーマンショックに苦しめられた前期とは様変わりしている。

 数字を見る限り、収益状況は「V字型回復」していると言ってもよい。それに加えて、多くの企業は2011年3月期の決算が、さらに大きく改善すると予想している。そうした予測通りの展開が続けば、わが国企業の業績は、今後上昇トレンドが一段と鮮明化することが期待できる。

 相次ぐ企業の好決算は、果たして手放しに喜んでいいものだろうか?

3月期決算で「V字回復企業」が増加も
投資家や関係者が手放しに喜べない事情

 結論から言うと、まだまだ無視できない不安要素はある。特に、今3月期の決算をもう少し詳細に分析すると、売上高が増えない一方、リストラなどのコストカットで収益を上昇させている姿が浮き彫りになる。

 しかも、収益の改善傾向が少しずつ広がっているとは言うものの、目立つのは新興国向けの輸出関連の企業が多く、国内需要に依存する小売りやサービスなどは、依然苦戦が続いている。リーマンショックによる急落があまりにも大きかったため、「今回の決算の改善度合いが、より大きく見える」という事情も考える必要がある。

 また、足元ではユーロ問題や、中国の金融引き締め懸念などの不透明要素が浮かび上がっている。これらの問題が長期化するようだと、わが国の景気の回復が頓挫することも考えられる。

 これらの要因を総合的に考えると、企業収益の「V字型回復」を信用するまでには、もう少し時間をかけて経済状況を注視する必要がある。あるベテラン・ファンドマネジャーの1人は、「企業には、まだ大不況の傷跡が生々しく残っており、業績の急回復を確信するのは尚早だ」と指摘していた。その通りだろう。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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