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「引きこもり」するオトナたち

なぜ“出る杭”は打たれる?
日本社会に漂う「生きづらさ」の正体

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第21回】

昇進異動をきっかけに「うつ」に
高度なことが理解できない状態に

 人は周囲に恵まれ、期待されていたとしても、環境の変化によって自分に自信が持てなくなってしまうことがある。

 30代の石川幸雄さん(仮称)は、団体職員として10年ほど勤めていた。

 辞めた当時の記憶は、防衛本能なのか、ぼんやりしている。ただ、自分を責め、つらかった事は覚えている。

 昇進異動がきっかけで、5つのセクションという広い範囲をマネージメントする立場になり、部下も数十人に増えた。組織のあり方が大きく変わった年でもあった。 

 石川さんは、だんだん元気がなくなっていって、気がついたら、会議中、人の話が理解できなくなっていた。

 だんだん立場が偉くなるにつれて、自然と求められるものが高度になってきた。いろいろ考えなければいけないことや、板挟みになることもある。自分の力が足りないんじゃないかという気持ちが強くなって、自分を責めるようになってしまった。自分は、この職場にはふさわしくないのではないかと思うようになった。

 職場の人間関係はとても良かった。だんだん元気がなくなる石川さんを見て、上司も心配してくれた。

 しかし、クリニックで診てもらうと、医師から「うつ病」と診断される。そして、「1ヵ月くらい、会社を休んだほうがいい」とアドバイスされ、休職した。

 突然、何もしなくていい状態になるのは、すごく不安だった。うつ病と言われたのも、ショックだった。

 でも、休んでみようと思った。しかし自分に自信が持てなくなっていたので、心の奥底ではもう今の職場を続けるのは無理かもと思っていた。

 自分はもう、これから先、今の仕事を続けていく自信がない。そう感じた石川さんは、自ら辞表を出した。

 その後、日曜日に入ってくるような求人チラシで、工場の単純作業の仕事ならできるかなと思い、面接を受けたりした。

 しかし、工場に履歴書送り、その書類選考で落とされたり、面接まで行ったりしても、採用には至らなかった。ある社では「病気に罹っていますか?」という質問欄に、「うつ病」と正直に書いたからだろうと、自分でも思った。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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