「会社がつまらない」。そう言って転職したり、転職を真剣に考えたりする若者が、最近なぜか僕の周囲で急増している。だが、転職できるならまだマシで、なかには「転職したいけど、さりとて次の仕事で何がしたいのか、自分でもよく分かってないので転職活動のしようがない」というところで真剣に悩み、ストレスのあまり体調を崩してしまっている若者もいる。

 もちろん、こうした若者の離職問題はいまに始まったことではなし、会社にとっては古典的なテーマでもある。昔から、会社がつまらないと言って辞めていく若者はある一定数はいただろう。ただ、僕の周辺で、会社がつまらないと言って悩んだり転職したりする若者の話をじっくり聞いていると、いまの時代だからこその問題点、そして人材活用の見えない壁というものが見えてくる。

若者たちが感じている
「仕事の質と量」への不満

 数年前、若者の3割が3年以内に会社を辞めるという「データ」が広く世の中にアナウンスされて以来、若者の離職問題は大きな社会問題になり、政府も企業もその問題に取り組むようになっている。しかし何事もそうだが、認識が間違っていたり、そもそもの解決の方向性が間違っていたりしたら、何をどうやっても問題は解決されない。なぜなら僕は、いまの若者の離職問題、労働問題には、あまり議論されていない大きな誤解、見えない壁というものが存在すると思うからだ。それは、高学歴・高キャリアで、仕事への意欲も自分自身の成長意欲も高い「ハイスペック人材」に関することである。

 若者の離職問題に関しては、厚労省も真剣に取り組んでいるように思われる。しかし、たとえば厚労省の「平成25年度若年者雇用実態調査」を見ても、ハイスペック人材の離職問題の正体は全く見えてこない。同調査レポートでは、若者が「会社を辞めた理由」として、トップは「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」となっている。これだけを見ると、ほとんどの人は「労働時間が長く、休日もなく、有給休暇も取れないから若者は会社を辞めていく」と思ってしまうし、若者の離職問題解決のためには、残業削減や休日出勤の禁止など、労働時間の適正化というか削減が最重要課題だと考えるだろう。

 たしかに、世の中にはいわゆるブラック企業もあり、過重な労働時間を強いることは問題だし、解決すべきである。しかし、ハイスペック人材に限って言えば、実はこの「労働時間」と「離職/転職」の関係性は、世間の常識とは真逆ではないか、と僕は思う。多くのハイスペック人材は、労働時間が長いから会社を辞めるのではなく、「仕事の質と量」に不満を感じているから会社を辞めるのではないか――。