個人事業主の被害が増加
手口は多様化へ
貸金業者としての登録をしておらず、“ヤミ”であるだけに、その実数すら把握されていないヤミ金業者たち。しかし最近、多重債務問題の専門家のあいだで「ヤミ金が再び増えているのでは…」とささやかれている。
実際、日本貸金業協会が年に1回行っている資金需要者(借入利用者)向けアンケート調査によると、個人は減少傾向にあるものの、事業者(個人事業主など)に関しては、2015年度はヤミ金など非正規業者との接触経験のある割合は13.5%と、前年度から3.6ポイント上昇した。
上限金利の引き下げや、収入に応じて借入額を制限する、いわゆる総量規制などを盛り込んだ改正貸金業法の全面施行から5年が経った。上限金利は年率29.2%から、同15~20%に下がり、これに伴って経営が成り立たなくなった中小の貸金業者が次々に廃業。大手も、総量規制の影響も相まって貸し出しを大きく絞った。
代わりに債務者たちを助けるかたちとなったのが、いわゆるグレーゾーン金利分を貸金業者から債務者に返還させる「過払い金返還請求」だ。貸金業大手7社で3兆円とも推定されるおカネが、貸金業者から返還された。手元にまとまった過払い金が戻ってきたことで、多重債務の悪循環から抜け出した人も少なくない。ただし、ヤミ金が消えたかと言えば、まったくそうではなく、前述したように特に事業者向けでは増える傾向も確認された。
ヤミ金と言えば、かつてはトイチ(10日で1割)、トサン(10日で3割)、さらにはたった1週間で10割など、法外な金利で債務者を苦しめる業者を指すのが一般的だった。当然、正規業者が行っている都道府県への登録も行っていない非正規業者たちだ。その多くは、暴力団の資金源でもある。
しかし、最近では、前述したように廃業した元正規の貸金業者が、こっそりと顔なじみのお客たちにカネを貸すケースが増えている。業法にのっとった金利では商売にならないから、水面下で知り合いに少し高い金利で貸して儲けよう、という魂胆のヤミ金たちだ。
たとえば、今年9月に札幌地裁で公判が行われたヤミ金のケースでは、中小の貸金業者に勤務していた2人の被告が退職後、ヤミ金業に手を染めていた。こうしたケースは、暴力団関係のヤミ金ほど恐ろしい手口ではない。
「おカネに困っている被害者からすれば、気軽に貸してくれ、むしろありがたい存在でもあります。だから被害が表面化しにくい」(遠藤清一・日本貸金業協会業務企画部部長)。