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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

雇用情勢は好転ではなく、むしろ悪化している

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第15回】 2015年6月4日
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 企業の利益が増大し、株価が上昇している。政府は利益の一部を賃金に還元させるとして、企業の賃上げに介入した。その結果、今年の春闘はベースアップが続いた。他方で、有効求人倍率が上昇している。これらは、雇用情勢の好転を示すものと言われることが多い。以下では、雇用に関する事態は、実は悪化していることを示す。

春闘での賃上げ率は高かったが
現金給与総額はほとんど伸びていない

 毎月勤労統計調査によると、2015年3月の現金給与総額の前年比は、調査産業計で0.0%だ(図表1参照)。

 業種別に見ると、医療、福祉のみが4.1%増と高い伸び率を示したが、他産業の伸びは押しなべて低い。製造業は0.1%増、卸売業、小売業はマイナス3.2%、不動産・物品賃貸業はマイナス3.4%などである。

 以上の状況は、春闘での賃上げ率がかなり高い値だったのと比べて、大分差がある。厚生労働省の「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、民間主要企業春闘賃上げ率は、14年が1.8%、15年が2.19%だ。

 このような差が生じるのは、春闘が主に大企業の正社員にかかわるものだからだ。実際には大企業は全体の一部でしかなく、また非正規社員の比率が増大しているために、経済全体の賃上げ率との乖離が生じているのである。

 乖離が生じるいま一つの重要な理由は、雇用者増加率の高い医療、福祉は、賃金水準が26万2709円と、調査産業計の27万4536円よりかなり低いことだ。賃金の低い部門が成長し、賃金が高い製造業の雇用が伸びないために、賃金全体が伸びないのである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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