現在は一切の経営から離れ、参議院議員となっているワタミ創業者の渡邉美樹氏。自らが手塩にかけて育ててきたワタミが、経営危機にひんしてしまった現状をどう見ているのか。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

わたなべ・みき/1986年ワタミを設立。92年居食屋「和民」を開発。農業、介護、宅食事業などに参入し2009年会長。13年から参議院議員(自由民主党・全国比例区) Photo by Masato Kato

──ワタミの経営が危機的状況に陥り、特に外食事業の不振が際立っています。

 居酒屋チェーンの寿命は5年といわれますが、ワタミは15年持ちました。かつてのワタミは非常に強い収益構造で、店の利益が25%あり、売上高が落ち続けても利益が取れた。それで、ゆで上がるカエル状態になってしまった。

 過去に、新業態の立ち上げも一生懸命やりましたが、利益は5~6%。和民は売上高が落ちても利益が15%ある。なんだ、やっぱり和民の方がいいじゃないかと。新業態を開発しても、和民に戻ってしまい、和民を見直すということが続きました。

 和民のような総合居酒屋の役割は終わっている地域があったのに、強かった故に離れ切れなかった。これが外食の赤字を生んだ本当の原因だと思います。

──現経営陣の再生策では、3割の店から和民の屋号を外します。

 和民から離れるものは離れる。ブランドが通用する所は残す。お客さまがそれを望んでいますから、私は大変いいと思います。

 ぜひ目隠しテストをしてほしい。焼き鳥でも刺し身でも、和民の商品力は居酒屋業界の中でも負けていません。でもなぜ数字が落ちるかといえば、和民だからというところで、お客さまがわくわくしていない。せっかくの商品力が8掛けにしか評価されていない。だったら和民と違う看板にすればいい。

──過去、散々新業態を開発しましたが、定着しませんでした。

 今度は、間違いなく新業態が生まれます。なぜなら、和民が損益分岐点を割ったから。もう和民には戻れません。なんとしても、つくらなければいけない状態に追い込まれた。

 過去は、結局、僕がコンセプターでした。今回は、コンサルタントなど外の力も使おうとしており、その中で新しい業態が生まれてくると思います。