目を疑った3社連合のニュース
期待したいが前途は多難

3社のパソコンは商品のキャラクターが大きく異なるのだが…

 SONYから分社化したパソコン事業の会社であるVAIOと、富士通、東芝のパソコン部門が合体して、それぞれの会社が出資する、いわば「3社相乗りのPCカンパニー」を作る構想があるとのニュースを見た。率直に言って、3割は「いかにも」と思ったが、7割は驚いた。

「いかにも」と思ったのは、日本の電機各社のパソコン事業は儲かっていないだろうと思われるので、今さらながらではあっても「選択と集中」を考えるなら、スピンオフしたい事業だろうという理由だ。

 他方、会社の方針とはいえ、それぞれの会社のブランドに誇りを持っていた社員が、「事業売却」と共に、かつてライバルと思っていた会社の社員と「一緒くた」にされるのだ。ビジネスの現実だとはいっても、つい最近まで家族的な一体感を持っていた大手電機メーカーにお勤めの人々の気持ちはいかがなものなのだろうか。

 近年、それぞれの会社の業況は楽なものではなかったので、各社のパソコン事業に関わる社員は、会社に対して既に精神的な距離を取っていたかもしれない。しかし、合併銀行がそうであるように、この会社ができた場合、旧3社出身者の人事的な主導権争いは厳しいものになるだろうし、良いと思う技術や商売のスタイルに関する価値観の違いも深刻だろう。

 主導権を持つ銀行がはっきりしない3行が合併した銀行がそうであるように、人事の主導権争いにあっては、旧3社のうちの2社の出身者が結託して、もう1社の出身者の社内的勢力を削ぐ形になるのだろう。争いに勝っても負けても社員は消耗する。

 そして何よりも、3社のパソコンは商品としてのキャラクターが大きく異なる。間違っているかもしれないが、筆者のイメージでは、日本的技術スペックの高さとコストパフォーマンスが強調された富士通、米国風と質実剛健を兼ね備えノートブックの先駆者のプライドを持つ東芝、製品としてはひ弱な感じなのだがデザインがお洒落なVAIO、は少なくとも日本のパソコンユーザーから見るとイメージが重ならない。「FM・VAIO・ブック」とでも名乗るのかもしれないが、どんなパソコンが売られるのか、イメージしにくい。3本の矢はバラバラの方向を向いている。