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安東泰志の真・金融立国論

年金は積極的運用こそが受給者のメリットになる

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第64回】 2015年12月10日
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国債100%での運用を主張する人は、分散投資によるリスク低減効果を考慮していない

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は11月30日、2015年7~9月の運用損失が7兆8899億円だったと発表した。世界的な株安の影響で利回りは5.59%のマイナスとなり、安倍内閣が主導した昨年10月の運用改革後、初めての赤字に陥った。

 この報道に対して様々な批判があるようだが、年金の運用は超長期で評価されるべきものであって、四半期の運用成績を云々しても仕方がない。それよりも、筆者がより深刻と考える問題は、GPIFはもちろん、日本の年金全体がオルタナティブ投資、特にプライベート・エクイティ(PE)を積極的に組み入れていないことだ。それによって産業の新陳代謝が遅れ、年金運用のリスク自体も高まっている可能性がある。年金がPE投資をすべき理由をいくつかの観点から説明してみよう。

リスクが高まるのにリターンは見込めず
国債への投資は割に合わない

 年金(公的年金と企業年金では制度設計が異なるが、本稿ではまとめて「年金」と言う)は、超長期の運用を前提としているので、短期のパフォーマンスにはあまり意味がない。それより、長期的にいかにリスク対比のリターンを上げるかということ、そして、年金給付(債務)に見合った資産を維持できるかということが重要である。

 GPIFは経済状況に応じたシナリオを複数公表しているが、メインケースでは4.2%の名目運用利回りが必要とされており、また、企業年金もおおむね2%程度の名目運用利回りが必要である。これに対し、現在の10年物国債利回りは0.32%だし、企業年金がベンチマークにしているのは8年物のインデックスでは0.15%程度だ。すなわち、国債への投資を存置することは、座して死を待つに等しい。

 さらに付け加えると、国債への投資自体にリスクが高まっているという事情もある。日銀による「異次元緩和」がもたらすリスクだ。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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