前回は山口の社会起業家的な側面にスポットを当てたが、今回はその経営者としての側面に焦点を当てる。「企業の役割は雇用を提供すること」と語る山口だが、それは利益をあげなくてもよいということではない。利益をあげなければ、マザーハウスを大きくすることはできず、より多くの人を雇用することもできない。

“正しい“バッグ屋をどう立ち上げるかを
必死で考えている会社です

山口代表:私たちの理念にそった形で、利益を最大化する努力って、やっぱりやっていて、数字に対する執念みたいなものは非常に強いです。なぜかというと、副社長の山崎はゴールドマンサックスを経てから、うちに来た。私がどちらかというとデザインとか商品開発とかをやって、彼は数字をきちんと管理している。ムダとか非効率をどれだけカットして、スムーズな形で利益を出していくか、というところをみています。

 大企業と同じ様におカネがあるわけではないので、やっぱりベンチャーならではの戦い方があるんじゃないかというスタンスの人材が、集まっています。過去にバッグを売っていた人って、一人もいないんですよね、前職はIT、コンサルタント、外食産業などなど、いろんな業界から集まった若い人たちが、どうやったらこのご時世で、正しいバッグ屋が立ち上がるかを必死で考えている会社です。

山口は外から「社会起業家」とレッテルをはられることには、少々、違和感があるようだ。だから、「バランス」という言葉を何度も口にする。人を採用する場合も、その視点を、大切にしている。

 (東京の)下町の入谷に、出店コストを普通の何分の一にしようと、こうやって手作りのお店を出して、お客様に来てもらおうというアプローチをしながら、新宿の百貨店やそのほかに路面店を出しつつも、経営のバランスというのはすごく考えている。社会起業家といわれながらもやっぱり、数字、数字、数字って、つめる場面もたくさんある。そのバランス感覚がマザーハウスでは、一番重要だと思っているんです。