地域やライフスタイルに
応じたZEHを実現

「ハウスメーカーなど業界各社はZEH技術の開発に注力し、普及を推進しています。その結果、ZEHの導入件数も、エネルギー消費削減率も年々高くなっている。今回、ZEHの定義や評価方法が具体化されたことで、この動きがより加速し、消費者の理解や認識も進むものと期待されています」

 東日本大震災以来、節電や省エネの必要性が認識されたが、そこには「我慢」がつきものだった。実際、「我慢の省エネ」で居住者が体調を崩す例もあった。対してZEHは、普通に快適に生活していても省エネできる家であることが大きな特徴だ。

 高断熱の家だから、夏は暑さを、冬は寒さをシャットアウトして、一年中快適な室内環境がつくられる。窓の断熱性能の飛躍的な進歩で、開口部が大きくてもその快適さがキープできる。

赤池氏がLIXIL住宅研究所 アイフルホームカンパニーと開発した「家+庭生活CH08」。日本で初めて、作った電気を電気自動車のバッテリーに蓄電する実証実験を展開。光と涼を取り込む坪庭に露天風呂を設けるなど、楽しみながらのゼロエネ生活を提案した。写真提供/LIXIL住宅研究所

 また、最近は、夏と冬の日差しを考慮して軒を設計したり、庭の樹種や植え方で通風や採光をコントロールするなど、自然の力を生かしたパッシブデザインを取り入れたZEHも多くなっている。

「家庭という字は『家』と『庭』からできているように、庭はネイチャーギフトを取り込む環境装置です。こうした設計思想が生かされることで、ZEHは最先端でありながら、本質的な心地よさを持つ家になり得ます」

 ただ、ZEH仕様にするには、まだまだコストが高い。

「ZEHの普及に伴い、低価格化していくことが期待されますが、それまではクレバーなZEH造りをしてほしい」

 例えば、住んでいる地域によってZEHの断熱基準は変わる。仮に100で十分なのに、120の断熱性能を求める必要はないし、お風呂などの水回りとリビングを1階に集約して集中的に高断熱化する方法もある。

「低コストでお湯がたっぷりできるなら、露天風呂を造ってもいい。楽しみながら自分なりのZEHを実現してほしいですね」

 快適さを享受しながら、楽しみも広がるZEH。「2020年のスタンダード」を先取りするのも悪くない。

早稲田大学の受賞作。太陽光発電や太陽熱温水器、蓄熱間仕切り、潜熱蓄熱材など、工夫がたくさんある

大学生がZEHの技術開発に
参加する「エネマネハウス」

「学生が考える、将来の家」をテーマに、大学と民間企業の連携により、先進的な技術や新たな住まい方を提案するモデルハウス5棟を建築・展示する「エネマネハウス」。2015年度は、早稲田大学と芝浦工業大学が最優秀賞を受賞。若い世代は、すでにZEHの先を見据えていることを実感。