エンジンとモーターの組み合わせで走るハイブリッド車(HV)が日本を代表する次世代技術であることは周知の通り。HVと同様、電気自動車(EV)も日本メーカーが世界市場で先駆けとなり、先頭を走っているのはご存じだろう。
しかし、HVと並んでエコカーの代表格とされるEVを巡り、専門家の間で懸念が渦巻いている。その懸念とはずばり、航続距離の短さなのだ。一般に伝えられることのない、日本の最新技術を巡る動向を探ってみた。
アナリストが絶句した航続距離データ
「以前から噂は聞いていたが、実際のデータに触れて言葉を失った・・・」(国内証券アナリスト)
6月中旬、EVの開発に熱心に取り組んでいる日産自動車が、あるデータを公表した。そのデータが波紋を広げている。
同社は今年12月、EVの戦略車「リーフ」を国内市場に投入する予定だ。ただ、6月中旬に実施した専門家やアナリストを集めた試乗会では、事前に予想されていた航続距離を大幅に下回るデータが提示され、これが波紋を広げているというわけだ。
具体的には、「従来、メーカーからは米国基準で1回のフル充電で約160キロの走行が可能との見通しが示されていた。だが、新たに示されたデータは、実生活では使い勝手が極めて悪いと言わざるを得ない数値だった」(外資系証券アナリスト)。
日産が関係者に示したデータは、以下のような内容だ。
<北海道の草原地帯を時速60キロメートルで、エアコンをオフで巡航する場合 → 220キロ航続可能>
<エアコンがフル稼働する夏季、都心の渋滞の激しい道路(平均時速10キロ)を走行する場合 → 75キロに落ち込む>
<速度上昇とともに空気抵抗のロスが増えるため、航続距離が短くなる。欧州走行モードで高速道などを平均時速81キロで走行すると、航続が76キロまで短くなる>・・・といった具合だ。
日常の移動手段として期待されるEVの使用環境が、「北海道の草原」と「渋滞・高速道」のどちらに比重が置かれるべきかは言うまでもないだろう。
新たに開示された予想数値に接したアナリストからは、「真夏の都内や主要高速道の大渋滞中に電池切れ車が続出して、さらなる渋滞を誘引する可能性は否定できない」(国内証券アナリスト)、「高速道では30分に1回程度の充電が必要になる公算が大」(外資系証券ナリスト)などと厳しい見方が出ていたのは言うまでもない。