中国のEV大手・BYDのクルマBYDが日本にもたらす本当の脅威は、来年やってくる「軽EV」ではない… Photo:JIJI

BYDが2026年末までに日本の軽自動車市場に参入することを発表したのを受けて、前編記事では、“低め”に推定してもBYDの「軽EV」が国産車と比較して圧倒的に高い性能を備える可能性について解説しました。では、日本独自のガラパゴスな軽自動車市場はすぐに蹂躙されてしまうのでしょうか――。否、筆者は「BYDには日本車と比較して劣位な点が3つある」と言います。しかし、安心はできません。なぜなら、日本メーカーにとっての「本当の恐怖」は、「軽EV」ではないからです。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

BYD「軽EV」は
そこまで脅威じゃない?

 一番目は中国車のイメージの低さです。これについてはあらためて申し上げるまでもないでしょう。本稿では、二番目と三番目の問題について詳しく説明させていただきます。

 日本市場でどんな人が軽自動車を買っているのか。外国人ビジネスパーソンは一般的に「日本とは東京、大阪だ」と捉えています。そのような外国人には軽の市場はかなりわかりづらいはずです。

 ひとことで言えば、軽トラックやボックスカーなどの軽商用車の需要は都会にもありますが、軽乗用車は主に地方都市の郊外ないしは農村部で売れています。軽商用車は充電インフラの問題で都市部では当面ガソリン車にかなわないので、BYDの市場は主に軽乗用車になると推定できます。

 では郊外や農村でどのような人がどのようなライフスタイルで軽乗用車を購入しているかというと、世帯の中で主に女性が二台目需要として購入しているケースが多いのです。サクラがEV不毛地帯の日本で例外的に売れているのはこれが理由です。世帯の一台目としてはSUVなど大型のガソリン車ないしはHV車(ハイブリッド車)をすでに所有しているので、二台目は主に近場の移動だけに使えればいいと割り切れるのです。