「ぜひやれと言われれば、初め半年や1年はずいぶん暴れてご覧に入れます。しかし、2年、3年となっては、まったく確信は持てません」。1941年、近衛文麿首相から日米開戦の見通しを問われた山本五十六・連合艦隊司令長官は、そう答えた。
永野修身・海軍軍令部総長も真珠湾攻撃の3カ月ほど前に、「開戦2カ年の間必勝の確信を有するも……将来の長期にわたる戦局につきては予見し得ず」と述べていた。2人とも、戦力・資源が豊富な米国という大国を相手に日本が長期戦を戦い抜くのは不可能であり、やるならば短期戦でなければならないと考えていた(『失敗の本質』中公文庫)。
同様に、2013年4月に「2年程度でインフレ率を2%にする」と宣言して開始された日本銀行の量的質的金融緩和策(QQE)は、短期決戦型の政策だった。「明確なコミットメント(約束)と大胆な行動」が国民の期待を動かすと日銀は考えた。
しかし、インフレ率は思うように上昇せず、QQEは間もなく4年目に入る。従来型の“兵器”(国債買い入れ策など)の追加投入に限界が見えてきたため、日銀は1月にマイナス金利政策の導入を決めた。短期決戦のもくろみが崩れたため、日銀は徹底抗戦を決意したようだ。
果たして、その判断は正しいのだろうか。前掲『失敗の本質』によると、インド東部のインパールで日本軍と戦ったウィリアム・スリム英第14軍司令官は、「日本軍の欠陥は、作戦計画が仮に誤っていた場合に、これを直ちに立て直す心構えがまったくなかったことである」と指摘している。