日本の海外観光客への「おもてなし」は、全然世界一ではない?

「いつもながら、素晴らしい絨毯やな…」

 私はいま、こちらシンガポールはチャンギ国際空港からインドのムンバイに向かう前のラウンジで、このコラムを書いている。シンガポールに到着する度に思うのは、この空港の絨毯は本当に世界一ではないかということだ。ふっくらしていて、それでいて沈み込まない。色彩は美しく、独自のパターンがあるが飽きが来ない。時間が許せば一日中、チャンギ空港のカーペットをボンヤリ眺めながら一日を過ごすのも悪くないだろう。

一流が実践する「視野を広げる習慣」の中身

 シンガポール空港や航空は、東南アジアの国々の中で、空の業界に限れば日本も真っ青なくらい、サービス水準が高い。シンガポール航空は座席の大きさ(寝るときはまさにフルフラット)、乗組員の親切な態度も印象的だ。

 感心するのは、離陸前にテーブルをしまうようお願いする時も、“Can you help me~”と、気持ちよく応じたくなる話し方をするところ。私がテーブルを座席にしまうだけで、なにやら人助けの大いなる善行を果たした気分にさせてくれるのだ。

 日本はサービスが世界一、というのが定説になっているが、少し視野を海外に広げれば、サービス業のレベルは着実に上がっている。サービス世界最低で有名であった中国でさえ、これは日本のサービス業の功績が大きいが、日進月歩でレベルは上がっているのだ。

 これに対し、日本の空のサービスというか、海外観光客へのサービスが、「日本人は親切だ」という評判にあぐらをかいて、ずいぶん対応がぞんざいになっているのではないか。

 例えば外国人観光客として東京に来た複数の海外の友人は、通関のところでスタッフが不法移民を取り締まるような不遜な態度を取ると怒っている。かつ日本人レーンが全く誰も並んでいないのに長蛇の列をなしている外国人を誘導しないなど、結構不評である。羽田空港に関してはトイレの綺麗さは満足だが、その他のソフト面で不快であったと不満を口にするひとも複数いる。

 他にも、私がダイエットしなければ、と皇居の周りを歩いていた時、皇居の警備員のオジサンが、中国人観光客にかなり乱暴な口調で「ここは走るな!」と怒声を浴びせていたのだ。だが、中国の観光客にしてみれば、何を怒られているのか日本語で叫ばれてもわからないではないか。

 これに対して観光客数世界トップを争うロンドンの皇居、バッキンガム宮殿では警備の衛兵さんもこなれたものである。世界中から無数の観光客が押し寄せる中、エリザベス女王が外出する時にスペースをつくるべく観光客に道を開けさせるときは、「Get out!!」などと大声で怒鳴るはずもなく、「Thank you for your cooperation」と感謝しながら協力を求めるのだ。

 日本の「海外観光客をお迎えするソフトインフラ」に関しても、外に目を向けて世界のベストプラクティスを取り入れていく必要がある。さもないと、製造業などでアジアのライバル国に次々と追い抜かれていったように、いつしか「サービス水準世界一」のブランドも数年後には台湾かシンガポールに王座を奪われているかもしれない。

 今後、東京オリンピックに向けてさらに海外からの観光客を迎える前に、一流のホスピタリティ・サービスを提供できるインフラ整備もしっかりと進めたいものである。

 前置きが長くなったが今回は、一流のプロフェッショナルがもつ「視野の広さ」を得る方法について話したい。