足踏みから抜け出せない日本経済
回ってきた人口減少問題放置のツケ
わが国経済の閉塞感がなかなか払拭できない。アベノミクスの円安・株高で一時的に盛り上がった景況感は、昨年11月中旬以降、再び悪化している。
家計部門の実質ベースの所得が減少している一方、食糧品などの価格が上昇し、人々の生活実感は厳しさを増している。個人消費の大幅な伸びを期待できる状況ではない。
海外に目を転じると、中国経済の一段の減速懸念や米国経済の先行き不透明感、さらには欧州地域の景気低迷や一部金融機関の信用不安など、リスク要因はそれこそ枚挙に暇がない。短期的には、輸出の拡大も大きな期待は持てそうにない。そうした状況を考えると、景気が足踏み状態から抜け出せないのは仕方がないだろう。
ただ、わが国経済の閉塞感の大元に、二つの大きな要因があることを忘れるべきではない。一つは、人口構成の問題だ。既にわが国の人口は減少局面を迎えており、しかも少子高齢化の進展で、経済の様々な面で下押し圧力が働き始めている。
理屈から言っても、人口が減り、シニア層が増えると消費は伸びにくい。また、供給サイドを考えても、モノを作ったり、サービスを提供したりする労働力に制約がかかりやすい。また、シニア層の増大は社会保障費などの負担を増すことになる。
かなり以前から、わが国の人口問題の重要性は議論されてきたにもかかわらず、国としてほとんど有効な手立てを打つことができなかった。そのツケをこれから払わざるを得ない。
もう一つ重要なポイントは、実情に合わない仕組みや制度を刷新するのを怠ってきたことだ。それは公共セクターに限らず、民間企業でも同じだ。社会全体で、昨日とは違う新しいものを生み出す努力が足りなかったと言える。