経営 × 財務

企業と投資家の「高質な対話」によるガバナンスが必要になる
北川哲雄・青山学院大学 国際マネジメント研究科教授

【第11回】 2016年3月29日
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インべストメント・チェーンの中において機関投資家が果たすゲートキーパー(門番)の役割~企業のウオッチ

――2014年2月には、責任ある投資家の諸原則、スチュワードシップ・コードもまとめられました。

 コーポレート・ガバナンス・コードが企業を対象とするのに対して、スチュワードシップ・コードは投資家を対象として厳しい自己規律を求めるものです。スチュワードシップは国民から預けられた資金につき責任をもって管理するというニュアンスが含まれ、英国的な概念と言えるでしょう。それゆえ年金基金や投資信託のお金を預かっている機関投資家が投資対象の企業を真摯に分析しないことはスチュワードシップ責任を果たしていないということになります。

 今後(既に始まっているかもしれませんが)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などのアセットオーナーは運用委託先の機関投資家に、受託者責任を果たし、スチュワードシップ・コード、コーポレート・ガバナンス・コードに基づいた対話をしているか、について精査することになるのではないでしょうか。

――投資家が、対話を通じて企業をウオッチするという仕組みになっているのですね

 GPIFは国民の大事な財産(年金)を預かっている機関ですから、GPIFは国民に対して責任を負っています。つまり、企業は機関投資家に、機関投資家はアセットオーナーに、アセットオーナーは国民(企業の社員はもちろんその中に含まれます)に責任があるという循環になっています。国民のお金が巡り巡って投資されるインベストメント・チェーンの中で、投資対象となる日本企業にはグローバルな競争の中で圧倒的なポジションを維持してもらわなければなりません。そうでないと日本株式会社の株価は順調に推移しません。

 そのために機関投資家は時として非常に厳しいことを企業に伝えることもあるかも知れません。だからゲートキーパーなのです。その意味で、両コードは、国民全体の福祉のためにも重要と言えるでしょう。

――しかし、両コードには、強制力はありません。

 両コードは、会社法や金商法のような法律、ハード・ローではありません。あくまで自律的な規範であり、自主的に対応するソフト・ローとなっています。様々な識者が参加した委員会で社会的合意を形成するソフト・ローは、資本市場に関しては約20年前から、英国で社会変革の推進力として注目されるようになり、日本にも本格的に導入されることになりました。その長所は、常に見直されることで、行き過ぎの点も不足な点も柔軟にただすことができることにあります。

 コードは、強制ではないので、極端に言えばコーポレートガバナンス報告書を東京証券取引所に提出しなくても刑罰が科せられることはありません。しかし、機関投資家の目もあり、コードを無視した企業は、社会的制裁を受けることになります。こうしたゲートキーパーによる自主規制を活用する動きが、今の資本市場では広がっています。

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