ミャンマー進出の先行組の会社の相談を受けて驚くことがある。びっくりするほど事前の検討なしにミャンマーに入っていって、失敗をしていることだ。今回は、そもそも「なぜ」ミャンマーに進出するのか?検討するための6つのフレームワークについて考えてみたい。

事前の検討なしに進出しても、成功はしない

「孫子曰く、兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」(『孫子』始計編)
 古代中国の代表的な兵法書である『孫子』は言う。戦いは、国家の大事であり、存亡がかかっている。それがゆえに慎重な検討の上で行わなければならない。海外進出においても、全く同じだ。海外進出は、その企業の重大事であり、また存亡の道だ。従って、相当慎重な検討が行われなければならない。
 だからこそ、戦略立案が大事になる。また、もう一つの背景には当たり前のプロセスが意外と行われていない事実がある。この連載では、ミャンマー進出における様々なリスクを見てきた。またその上で、ミャンマーは海外進出先として決して容易ではないことを説明してきた。そもそも、海外進出は決して容易な話ではない。従って、それ相応の十分な準備が求められるのは、ある意味当たり前の話だ。
 2011年から政治経済状況が大幅に変化し、その中で我先にと現地に飛び込んでいった企業も多いが、そうした先行組のいくつかは当初の目論見から予想が外れて撤退を開始したところもある。そういう会社の相談を受けて驚くのが、びっくりするほど事前の検討なしに入っていったことだ。将来の可能性、未開の地、先行者利益という言葉に踊らされて進出したはいいが、結局事業化に至らず、合弁先とどのように事業を畳むかの話がもうすでに始まっている。
 一つの海外進出の失敗は、どの会社にとってもそれなりに大きな損失だ。特に中小企業にとっては、その失敗によるインパクトは本社の屋台骨にすら影響を及ぼすことになりかねない。
 では、どんな企業でもすぐに実践できる戦略立案の考え方はあるか。進出戦略立案というと、難しそうに聞こえるし、色々面倒そうだ。実際色々と細かく行えばどこまでも大変な話になる。ただ、それよりも大事なのは基本的なポイントをまずしっかり押さえることである。ここではどんな企業でもすぐに使うことができる簡単な方法をご紹介したい。ポイントは、次の4つの質問にしっかり答えることだ。

ミャンマー進出戦略立案時に答えるべき4つの質問

1. 「なぜ」ミャンマーに進出するのか
2. 「いつ」進出すべきなのか
3. 「何を」進出対象にすべきか
4. 「どのように」進出するべきなのか