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結局グーグルは中国から本当に撤退したのか?
元米政府高官が明かす決定的対立回避の裏側

2010年7月22日
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検閲問題で中国政府と対峙するグーグルが、同国でネット事業を続けるために必要な免許の更新期限(6月末)を前に、若干の譲歩を示した。中国政府が問題視する中国版から香港版への自動転送を止め、利用者に香港版への切替を自らクリックさせる方法に変更したのだ。“小事”に見えるが、背景には株主の利益のために中国市場でのプレゼンスを維持したいグーグルと、厳しい検閲体制を維持しつつ情報化時代の勝者でありたい中国政府の内なる葛藤と打算そして駆け引きがある。マデレーン・オルブライト元米国務長官が率いる国際コンサルタント会社オルブライト・ストーンブリッジで、中国担当ディレクターを務めるヘンリー・リヴァイン元米商務省副次官補に問題の核心と今後の展開を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)

Henry Levine(ヘンリー・リヴァイン)
米国の元国務長官マデレーン・オルブライトが率いる国際コンサルタント会社オルブライト・ストーンブリッジで、中国部門のディレクターを務める。中国進出企業へのコンサルティングや、米国政府の政策決定の際のアドバイスを行う。25年間、米国務省の外交官として中国との貿易問題に携わり、商務省副次官補、上海領事も歴任した。

―米グーグルは先日、中国政府から同国でネット事業を展開するために必要な免許の更新を受けた。中国はこのことで何を世界にアピールしようとしているのか。

 中国政府は、国内に流入する情報をコントロールすると同時に、検閲の対象にならない情報については高いレベルのオープン性を保ちたいと考えている、ということだ。

 それに加えて、海外からの投資を歓迎し、すでに中国に関わっている投資家に対して、中国が依然として(投資に)ふさわしい国であることをアピールしたいのだ。もし、グーグルの免許を更新しなければ、インターネットのシンボルとも言える企業を拒絶し、オープンであることや情報時代に生きる国家であることを否定することになってしまう。そうしたネガティブな印象が広がることを避けるために行った処置だろう。

―グーグルは今年3月、中国政府の検閲に反対して中国からの撤退を表明。その後、中国サイトへアクセスしたユーザーを自動的に香港サイトに誘導する手段に出た。ところがライセンスが切れる期限間近になって、自動誘導を停止して、ユーザーに香港サイトへの切替を自らクリックさせるというやり方に変更した。この一連のグーグルの動きについてはどう評価するか。

 グーグルの戦略が一貫していないことに混乱を覚えている、と述べておこうか。つまり、グーグルは一方で公に、しかもかなり直接的な表現で中国政府を批判しながら、他方では事業を運営し続けるための免許を保持して、市場での存在を維持したいと望んでいる。そもそも、この二つのゴールは本来相容れないものだ。

 もちろん、一企業としてどのような戦略を選択するかはその企業の判断に委ねられている。グーグルの場合は、経済的そしてビジネス的な利点と、法的あるいはモラル面の目的をバランスさせようとしているのかもしれない。言い換えれば、検閲問題に対する一企業としての見解と、株主の利益とを両立させようとしているのだ。

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