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長内 厚のエレキの深層

東芝が発表した構造改革は
「コアコンピタンス経営」と言えるのか?

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第6回】 2016年3月23日
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家電・PCの売却によるBtoCビジネスからの撤退を構造改革の柱とした東芝。同社が目指すコアコンピタンス経営に漂う不安を斬る
Photo:Rodrigo Reyes Marin/AFLO

『サザエさん』CM協力継続でも
笑いが起きぬ東芝会見の深刻さ

 「サザエさんなどの(CMの)協力は引き続き行いたいと考えています」

 3月18日に行われた、東芝の事業計画説明会でのこと。家電・PCを売却、分社し、BtoC(民生向け)ビジネスからの撤退を構造改革の柱とした東芝の事業計画に対して、出席していた記者から、今後の広告宣伝方針について尋ねられた室町社長の回答である。

 緊張した場に場違いな『サザエさん』というフレーズ。記者がクスリと笑ってもおかしくないシーンにもかかわらず、笑い声どころか聞く方と応える方のどちらからも、笑みすら出なかった。それだけ深刻な事態ということだろう。

 東芝の不正会計処理は、トップマネジメント間の足の引っ張り合いからリークが行われたという話も聞こえてくるが、この不正会計が東芝を存亡の危機に追い込み、キヤノンへのメディカル事業の売却、中国美的(ミディア)集団への白物家電の売却、PC事業の他社との再編、売却を視野に入れた分社化など、次々と事業の切り売りを余儀なくされている。台湾鴻海傘下入りの方向で調整を進めているシャープや、経営状況が好転してきたパナソニック、ソニーも含めて、家電各社はリストラや事業の売却など、現場に痛みの伴う改革を行ってきた。

 各社は2000年代半ばから海外事業の不調や、エコポイント制度による利益の先取りによって急速に収益性が悪化し、同時多発的に経営悪化に陥った。それぞれ細かな違いはあるものの、現場の技術力、開発力が落ちたわけではない。日本のかつての「勝ちパターン」が有効ではなくなった競争環境の変化に対応できなかったことが、家電産業凋落の要因であり、これは技術の問題ではなく経営の問題である。

 しかし、長い間、日本のエレクトロニクス企業のトップは、「技術力で経営回復」という方針を掲げ、ものの見事に失敗の上塗りをしている。繰り返すが、問題の所在は技術そのものではなく、技術を経営のツールとして収益に結びつける経営者の意思決定にあるのだ。しかし、そのツケはいつもリストラや構造改革の名の下、現場のエンジニアが払わされている。

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長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

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