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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

マイナス金利は不動産バブルの引き金になるか

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第55回】 2016年3月24日
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22日に発表された公示地価によると、三大都市圏商業地の公示地価は2.9%と、前年の1.8%をかなり上回った。今後の不動産価格の動向について、注意が必要だ

 マイナス金利の目的は、企業の投資を増加させることだとされている。果たして、そのような効果があるのだろうか?以下では、法人企業統計に基づき、日本企業の投資行動を調べ、そうした効果があるかどうかを検討する。

 マイナス金利は、企業の現金・預金保有や、金融機関からの借り入れ返済には影響を与えるだろうが、設備投資に影響を与えるとは考えられない。そうなると、余った資金が不動産に向かう。三大都市圏商業地の公示地価は2.9%の上昇になった。不動産バブルが生じる危険がある。

マイナス金利は
企業の資金調達と使用にどう影響するのか

 この問題を考えるため、企業の資金調達と使用に関する会計的な関係式から出発することとする。

 ある期間について、つぎの均等式が成り立つ。

税引き後純利益+減価償却+金融機関からの借入金の増+社債・株式の増=配当+グロスの設備投資+土地購入+金融資産の増…………(1)

 以下では、つぎの項目のみを取り上げることとする(配当、税引き後純利益は、法人企業統計長期時系列の四半期データでは得られないため、前者は無視し、後者は利益剰余金の対前期比増で代理させる)。

・金融機関借入金(流動負債と固定負債)
・利益剰余金の対前期比増
・減価償却費
・設備投資(当期末新設固定資産合計)
・土地購入(当期末譲受固定資産)
・現金・預金の対前期比増

 これらの推移を示すと、図表1のとおりである。

 (1)の関係式のうち図表1では取り上げていない項目があるので、調達と使用は完全には一致しないが、ほぼ一致している。つまり、ここで取り上げていない項目を無視しても、大きな誤差は生じないと考えられる。そこで、以下では、ここで取り上げた項目だけについて分析を進めることとする。

 2014年頃から、四半期ベースで、設備投資が10兆円程度、減価償却費が8兆円程度、現金・預金増が5兆円程度、土地取得が1~2兆円程度だった。

◆図表1:資金の調達と使用

(注)調達=利益剰余金増+金融機関借入金(流動負債+固定負債)の増+減価償却費使用=設備投資+土地購入+現金預金の増
(資料)法人企業統計
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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