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茶色のシマウマ、世界を変える
【第1回】 2016年3月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
石川拓治

「高校生だからここまで」なんて限界は
つくらない

主体性を重んじる教育が実を結びはじめたISAKの今:小林りん×石川拓治対談【前編】

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次代を担うチェンジメーカーを育成する日本初の全寮制インターナショナル高校ISAK(アイザック)が開校して、1年8ヶ月が経過しました。ISAKの生みの親であり代表理事を務める小林りんさんと、その半生とISAK開校までをノンフィクションで綴った『茶色のシマウマ、世界を変える』の著者石川拓治さんが、「ISAK開校後、今、何が起こっているのか」をテーマに語り合います。前半は、チェンジメーカーを目指す生徒たちの葛藤と挑戦のお話から。(構成/両角晴香 撮影/宇佐見利明)

自らアクションを起こせば
世界は変えられる!

石川 ISAKが開校されて、もうじき2年ですか。その後どうですか? りんさんが思い描いた通りの学校になりつつある?

小林りん(こばやし・りん)インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)代表理事。1974年、東京都生まれ。国立大付属高校を中退し、経団連からの全額奨学金を受けてカナダの全寮制インターナショナルスクールに留学後、東京大学経済学部で開発経済を学ぶ。外資系投資銀行、ベンチャー企業経営を経て、2003年、国際協力銀行へ転職。05年、米スタンフォード大学国際教育政策学修士号を取得。06年から2年にわたり国連児童基金(ユニセフ)の職員としてフィリピンに駐在、ストリートチルドレンの非公式教育に携わる。06年にISAK発起人代表の谷家衛氏と出会い、学校設立をライフワークとすることを決意。世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ2012」に選出される。13年には日経ビジネスが選ぶ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。

小林 そうですね。ISAKは、将来世界で変革を起こす人材を育てる学校ですから、生徒たちの主体性を重んじています。それでいうと、生徒たちが問題意識をちゃんと持って、その問題に対して「自らアクションを起こせば世界は変えられる」という実感を手にし始めている気がしています。

石川 そう感じる理由は?

小林 最近、うちで生徒主導で生徒自治を求める運動が始まっていまして。

石川 え? ISAKで?

小林 そうなんです。「学校の定めた校則に疑問を感じる」というのが理由のようです。学校のルールを義務だと思わず、「おかしいと思ったら主張する、行動を起こす」ということを始めたんですね。

石川 へえ。

小林 他の私立校に比べたら、生徒の裁量に任せる部分が大きな学校だと思いますが、それでも疑問を感じたらすぐアクションを起こす。そういうところもまさにISAKっぽいというか、素晴らしいことだと私は思っています。

石川 生徒さんたちは、具体的に何を問題視しているの?

小林 例えば、Wi-Fiを夜の12時で切っちゃうルールについて。

石川 ……といいますと?

小林 24時間Wi-Fi環境にあるとゲームしたりYouTubeを見たりして、四六時中テレビがついている状態になってしまいます。それではよくないと、教員たちが生徒たちの健康面に配慮して「Wi-Fiは12時まで」と決めたようなんです。それに対して、「そんなのは自己責任なんだから自由にさせてよ」という思いがあるようでして……

石川 なるほどね。

小林 ただぶつぶつ文句を言うんじゃなくて、「変えてください」と直談判してくるのはすごい。着実に生徒たちはエンパワーされていると感じています。

石川 大人の言うことを素直に聞く子が「いい子」ってことになってるけど、高校生ともなると色んなことが見えてきますからね。りんさんとしては、そこはあえて主張したほうがいいと。

小林 自分で主張した結果、目上の人が決めたルールでも変えられるんだと実感することは、とても良い経験だと思います。社会もそうじゃないですか。今の女子学生は、産休・育休制度がある会社を優先的に選ぶそうですが、「あなたまだ22歳でしょう!」って言いたくなる。実際に出産するまで数年あるわけなので、それまでに産休や育休の制度を整えてもらうよう会社を変えてしまえばいいのにね。やりたいことが二の次になって、福利厚生や制度を重視するというのは、優先順位が逆だと思います。

石川 そう考えると、Wi-Fiの件で自己主張してきた生徒さんは偉いですね。

小林 はい、言い出しっぺは日本人の生徒たちだったんですけど、彼らにこう伝えました。「あなたたちは今すごく良いことを言ってるんだから絶対にあきらめないで言い続けなさい。ただし、その主張が通るか通らないかは、あなたたちの行動次第でもあるんですよ。人の心を動かすような行動を普段からとるべきです」って。

石川 ということは、その子たちはマジメというより、どちらかというとやんちゃなタイプだったんだ。

小林 そうなんです。するとね、行動がガラリと変わったんですよ。

石川 ほう。

小林 彼らが何をしたかというと、主体的に全生徒にアンケートをとって、98人中96人から回答を得たんです。アンケート内容は生徒の自治を問うもので、1~10のスケールだと、現状は6、理想は8~9だという答えが出たと報告がありました。個人の意見で終わらせず、「コミュニティ全体でこう思ってます」と明確な数字をまとめ上げて来たのは立派。彼らの行動がきっかけとなって、一大ムーブメントが起こっているんです。

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石川拓治(いしかわたくじ)

早稲田大学法学部卒業。ノンフィクションライター。1988年からフリー。1961年茨城県水戸市生まれ。著書に『奇跡のリンゴ』『37日間漂流船長』『土の学校』(幻冬舎文庫)、『三つ星レストランの作り方』『国会議員村長』『新宿ベル・エポック』(小学館)、『ぼくたちはどこから来たの?』(マガジンハウス)、『HYの宝物』(朝日新聞出版社)などがある。近著は『茶色のシマウマ、世界を変える』(ダイヤモンド社)。

茶色のシマウマ、世界を変える

2014年8月、日本で初めてとなる全寮制インターナショナル高校が軽井沢の地に開校した。中心人物は小林りん、41歳。
日本の高校を中退してカナダの全寮制高校に留学。自分の能力の限界や格差問題などにぶつかりながら進むべき道を模索し、さまようなかで、遂に「今まで日本になかった、チェンジメーカーを育てる学校をつくる」という天職に出会う。リーマンショックのため開校資金がゼロになったところからスタートし、いかにして10億円以上の寄付を集めたのか? インターナショナルスクールであると同時に、学校教育法第一条に基づく正式な日本の高等学校として認められるという許認可の壁をいかにして乗り越えたのか? 

困難に次々とぶつかりながらも、多くの人々を巻き込み助けられながら実現するまでの軌跡が生き生きと描かれた書籍『茶色のシマウマ、世界を変える』に寄せて、小林りんが各界の方々と語り合う。
 

「茶色のシマウマ、世界を変える」

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