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トヨタの自工程完結 ウェブ版
【第8回】 2016年3月31日
著者・コラム紹介バックナンバー
佐々木眞一

「忙しい、時間がない」が口ぐせの人こそ、
正しい「プロセス/手順」を考えるべき
トヨタの自工程完結をオフィスで使いこなすポイント(3)

オフィスでの仕事は、仕事は意思決定の連鎖です。いつどこで、どんな材料を使って、どのように意思決定をするのか。それが、まさに「プロセス/手順」です。あらゆる仕事は、この「プロセス/手順」によって構成されているはずなのです。『トヨタの自工程完結』から、オフィスで使いこなすポイントの3番目を紹介します。

 あらゆる仕事は、この「プロセス/手順」によって構成されているはずなのに、仕事をするときに、「プロセス/手順」は意外に意識されていない。もちろん、ぼんやりとあるのかもしれませんが、仕事の分解の仕方はきわめてぼんやりとしているケースのほうが多い。

 人間の頭というのは、本当に不思議なもので、しっかりと「プロセス/手順」を考えていないし、順番はバラバラなのに、それなりの結果が出てしまうことがあります。ぼんやりとしたやり方でも、それなりに仕事はできてしまうのです。しかし、それでは、いつまで経っても勘で仕事をしているようなものです。

 必要なことは、本当は自分がどんなふうに考えて仕事をしているのか、ロジカルに分解していくことです。そうすることで、「プロセス/手順」がしっかり構築できるようになる。それぞれの「プロセス/手順」で精度を上げることで、結果につなげていくことができる。また、ほかの人や新しくやってきた人にも委ねることができる。

「講演会の準備」の仕事の
「プロセス/手順」を丁寧に考えてみよう

 「講演会を準備する」という仕事の「プロセス/手順」を例に取り、図を使って考えてみましょう。「プロセス/手順」は、大きく五つの作業で作り上げていきます。

 第一段階では、作業(1)~(4)で、仕事の大まかな手順を明確にします。

 最初は、ざっくりとでいいので、作業(1)で大まかにやることを洗い出していきます。このとき、抜け・漏れのないように注意します。講演会の場合は、「企画をする」「告知をする」「申し込みをする」「参加者数を集約する」「バスを配車する」という五つが、「やること」として想定できそうです。

 こうした大まかな手順を抜け・漏れなく洗い出すためには、過去に同様の講演会が開かれていないかを調べ、そのときに作成した書類や情報がないか、確認し、整理整頓するところから始めることが有効です。

 次に、作業(2)で関係者を明確にします。図の例では、自分以外に関係者は二人だけですが、仕事のプロセスには、普通ほかの人やほかの部署が多く介在してきて複雑になります。前の作業で洗い出した「やること」が誰にかかわっているのかを明確にしないと、思わぬ手戻りの原因になるばかりか、正しい意思決定ができず、失敗に直結します。

 作業(3)では、仕事の流れを矢印で整理します。関連する部署や人との情報のつながりを明確にしたうえで、矢印をつないでいきます。

 作業(4)では、納期から逆算して、時系列で整理をします。それぞれの仕事の実施のタイミングや情報授受の内容について、作業(2)の関係者とこの段階でしっかりと合意しておくことが重要です。

 図のように「やること」をさかのぼっていくことで、必要な準備期間が明らかになります。後工程(ここでは関係者Bです)が必要とする情報やタイミングも考慮することを忘れないようにしましょう。

 作業(1)~(4)を通じて、全体を見渡したり、やることを洗い出したり、どの順番でやるべきかを考えたりせずに、いきなり「とりあえず」やってしまうというのが、最も失敗を呼び込みやすい仕事のやり方です。

 以上の大まかな手順を踏まえて、第二段階で細かく手順を考えます。作業(5)で特に重要な手順を明確にしたうえで、細かく分解していきます。

 図の「企画をする」という大まかなプロセスの一部分は、「講演者を決定する」「講演日時を決定する」「式次第を決定する」などに分解され、その中の「講演者を決定する」は、「講演者の候補を決定する」「講演依頼をする」「回答を集約する」「講演者を決定する」「正式に依頼する」に分解され、さらに「案内書をWordで作成する」「宛先リストをExcelで作成する」「宛名シールを差し込み印刷で作成する」「案内書を書留で送付する」に分解されます。

 ここまで分解すると、自分が具体的に何をすればいいかわかるレベルになっていると言えます。「何を」「どのように」「どうする」という視点で考えることが必要です。「自工程完結」では、自分自身が理解できるレベルではなく、担当がほかの人に替わっても同じことができるレベルの分解を求めています。

 「プロセス/手順」を考えていくことは、意思決定のプロセスを明文化していくことです。業務をプロセスにブレークダウンして、誰が見ても、こういう手順で、こういう情報を集めて、こうやって書類を出せばいい、というレベルにまで落とし込んでいくことです。

 マニュアルや手順書がある会社も少なくありませんが、あるのにまったく使えない。そんなマニュアルがないでしょうか。マニュアルは本来、人が作業を素早くこなすために作られたものですから、使えないマニュアルというのは、まったく意味のないものということになります。それは担当者の知識の範囲だけで、「プロセス/手順」を考えているからです。

また、妙に忙しい、時間がないという人は、「プロセス/手順」が正しくないからそうなるのかもしれません。だから、失敗ばかりしてしまう。どんなプロセスで仕事をするのが正しいのか、きちんと洗い出し、書き上げられていれば、防げたかもしれないミスはたくさんあると思うのです。
 

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佐々木眞一 [トヨタ自動車株式会社 顧問・技監]

1970年3月 北海道大学工学部機械工学科 卒業
1970年4月 トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社
1990年4月 トヨタ モーター マニュファクチャリング UK 株式会社 品質管理部長
1995年1月 トヨタ自動車株式会社 堤工場 品質管理部部長
2001年6月 取締役就任
2003年6月 常務役員就任
2004年6月 トヨタモーターエンジニアリング・マニュファクチャリングヨーロッパ株式会社 取締役社長
2005年6月 専務取締役就任
2005年10月 トヨタモーターヨーロッパ株式会社 取締役社長
2009年6月 取締役副社長就任
2013年6月 相談役・技監就任
2015年11月 著書『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』上梓
2016年7月 顧問・技監就任


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