スウェーデンの中央銀行であるリクスバンクのステファン・イングヴェス総裁。日本銀行の黒田東彦総裁と同じ状況に立ち向かう
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 日本銀行がマイナス金利政策の導入を決定してから2カ月が経過した。最近、金融市場参加者が集まる会合に数回出たが、いずれの場でもこの政策導入を決めた日銀への批判はいまだに鳴りやんでいなかった。

 しかしながら、マイナス金利政策を導入して世間から非難を浴びている中央銀行は日銀だけではない。スウェーデンの中央銀行であるリクスバンクは現在、政策金利をマイナス0.5%へ引き下げている。インフレ率を目標の2%(日銀と同じ)へ早く復帰させるためだが、このスタンスは同国の有力エコノミストや主要メディアから激しく攻撃されている。

「SvD Naringsliv」紙は、「コーヒー、アボカド、サーモンの値段が低いことはいいことだと、ほとんどのスウェーデン人は思っている。しかし、会議室に座っている経済の博士号たちは、そう思っていない」と報じた。

 “博士号たち”とはリクスバンクの幹部のことだ。同紙は単に物価は安ければいいと主張しているのではない。リクスバンクが早期にインフレ目標を達成しようとしている姿勢と国民の感覚とに隔たりがあることを問題視している。

 これほどの金融緩和策を行っていても、総合インフレ率(2月)は0.4%、住宅ローン金利の影響を除いた基調的インフレ率は1.1%だ。この低インフレは資源価格低迷など国際的な影響を大きく受けているという見方が多い。無理にでも2%インフレを目指すのならば、通貨安誘導で生活必需品などの価格を押し上げていくしかない。

 同紙は「1993年に2%のインフレ目標を導入したとき、リクスバンク幹部は、大事なのは物価が安定していると皆が思えることであって、インフレ率の数値は二の次だと言っていたではないか」「しかも、2010年までインフレ目標には1~3%の許容レンジが設けられていた(今のそれは1%台)。リクスバンクは、低インフレは危険だと言っているが、説得力がない」と指摘している。