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トヨタの自工程完結 ウェブ版
【第9回】 2016年4月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
佐々木眞一

今日の仕事は終わったのになぜか不安が……
という人に足りないものは何?
トヨタの自工程完結をオフィスで使いこなすポイント(4)

「目的・ゴール」をはっきりさせ、「最終的なアウトプットイメージ」を固めた上で、「プロセス/手順」をしっかりと考え、書き出したら、『トヨタの自工程完結』のポイント4つめは、次に進んでよいかを判断する基準、すなわち判断基準をつくる、です。

 仕事のアウトプットが正しいものになるかどうかを大きく左右するもの。それは、「プロセス/手順」の一つひとつが、確実に正しく実行されていくかどうかです。

 これはスタッフ部門の仕事でも同じです。洗い出した「プロセス/手順」でどれだけ精度の高い意思決定ができるか、が問われてくるのです。

 意思決定を行うための情報の優先順位、次の、「プロセス/手順」に進んでよいかがわかる「判断基準」を決めることが求められてきます。これは業務によって、大きく異なります。

 例えば、新車販売台数予測にしても、予測をするために必要なデータは山のようにあります。その中で、どこに重きを置くのか。マクロ情報に重きを置くのか、景気に重きを置くのか、それともトレンドに重きを置くのか。

 「判断基準」の例としてわかりやすいのは、パスポートの申請用写真ではないでしょうか。外務省のウェブサイトを見れば、詳細な「判断基準」が書かれています。「申請者本人のみを撮影したもの」「正面、無帽、無背景」「縦四五ミリメートル×横三五ミリメートル(ふちなし)」「カラーでも白黒でも可」「鮮明であること(焦点が合っていること)」……かなりの項目になりますが、読む人によって理解の仕方が異なることがない、明快な「判断基準」となっています。

 工場の生産現場できわめてシビアで細かな作業の積み重ねを見てきた技術屋の目から見ると、スタッフ部門は仕事の進め方がどうにも大ざっぱ、というのが正直な印象でした。そしてそれは、しっかりとした「判断基準」が作られていないからではないか、と私は感じていました。

 例えば、何かの結論を出して、上司に「こんなのは、デタラメを言っているんだろう」と問い詰められたとき、厳密性で対抗できるだけの「判断基準」を作っているかどうか。

 また、情報材料ばかり集めて、「判断基準」が決められない、というケースもよく目にしました。とにかく準備ばかりに時間がかかる。結局、「これだけ長くみんなの意見を聞いて検討したんだから、正しいだろう」といった、「判断基準」もはっきりしない中で意思決定が行われたりする。

 実際、上司がなかなか意思決定できないケースがよくあります。部下からの報告を聞いていると心配になり、ますます情報が欲しくなってくる。あれも欲しい、これも欲しいとなる。判断するためにはさほど重要でないことまで、果てしなく聞きたくなってしまう。

 これもまた時間がかかり、スピードを大きく阻害する原因になります。部下は本来、調べなくてもいいようなことまで調べさせられて、生産性を大きく損なったりする。結果的にその情報は使われず、モチベーションも下がっていく。

 そもそも、意思決定の目的は「お客さまのため」です。それがどこかに飛んでいって、自分の興味のあるもの、組織にとって関心のあるものが気になりだすのです。上司のため、会社のため、などという考えが強くなっていくと、おかしなことが起きる。

 本来は、そんなことは放っておいていい、ということまで気になり、中途半端な仕事になってしまう。

 上司が腹を決めて決断するためにも、「判断基準」は必要なのです。そして、これがはっきりしていれば、多くの人に判断ができるようになります。上司は部下に権限を委譲して、自分は別の新たな仕事に挑めるようになるのです。

(次回は、4月20日に公開予定です)

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佐々木眞一 [トヨタ自動車株式会社 顧問・技監]

1970年3月 北海道大学工学部機械工学科 卒業
1970年4月 トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社
1990年4月 トヨタ モーター マニュファクチャリング UK 株式会社 品質管理部長
1995年1月 トヨタ自動車株式会社 堤工場 品質管理部部長
2001年6月 取締役就任
2003年6月 常務役員就任
2004年6月 トヨタモーターエンジニアリング・マニュファクチャリングヨーロッパ株式会社 取締役社長
2005年6月 専務取締役就任
2005年10月 トヨタモーターヨーロッパ株式会社 取締役社長
2009年6月 取締役副社長就任
2013年6月 相談役・技監就任
2015年11月 著書『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』上梓
2016年7月 顧問・技監就任


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