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“現状維持”が最悪の選択である
【第2回】 2016年4月6日
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井堀利宏

高めの経済成長と自然増収が前提の“自然体”で
「2025年問題」に直面すれば財政健全化は遠のく

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危機的な日本の財政状況をあらためて確認すると、2020年代以降に一層深刻化することがわかる。「2025年問題」で歳出圧力はいっそう高まり、財政健全化に黄信号がともるが、十分な対応が検討されているとは言いがたい。

財政危機が解消されないまま、「2025年問題」を乗り越えられるのか  Ⓒtakasu

 言うまでもなく、日本の財政は危機的である。借金の大きさは1000兆円を超えているうえに、毎年数十兆円規模の国債を新規に発行している。わが国の財政赤字対GDP比率を国際比較すると、先進諸国では最悪である。さらに借金の規模といえる国債残高の対GDP比率は200%を超え、世界のなかでも突出して高水準であるうえ、ほぼ毎年上昇している。

 これほど借金が増えているのは、税収より歳出が多く、不足分が財政赤字となって国債の発行でまかなわれているためである。これが、災害や不況などの一時的ショックに対応するために歳出が増えて財政赤字になっているなら一時的であり、財政も早晩健全化できるだろう。しかし、日本の場合は構造的な要因で財政赤字が累増している。最近の国家予算をみると、社会保障費の比重が一番大きい。一般歳出の3割以上を占めており、しかも年々増加している。

“自然体”では到底実現しそうにない内閣府の中期財政展望

 安倍政権は財政再建の当面の目標として、2018年に基礎的財政収支(政策的経費と税収の差額。プライマリーバランス)の対GDP比赤字幅1%を達成して、2020年に基礎的財政収支の赤字を解消することを想定している。そして、さらに基礎的財政収支の黒字幅を拡大させ、過去の公債発行の費用についても新規の国債発行に頼らず税収でまかなうことで、ようやく公債残高を減らす見込みである。

 一般的に、税収を確保するには自然増収に多くを頼らず、税率を引き上げたり課税ベースを拡大するなどの地道な増税策が常道である。その場合でも税収が不足するなら、残りは歳出削減で捻出しなければならない。

 政府は目下、高めの経済成長率と自然増収を前提とし、2015年以降に歳出削減を徹底することで、増税なしでもなんとか基礎的財政収支の2020年度の黒字化は達成可能としている。歳出削減の前提は、社会保障費以外の歳出を名目額で2015年度と同様水準に維持するというものである。だが、名目成長率が3~5%程度で上昇するという経済再生シナリオを想定しながら、同時に、社会保障歳出以外の歳出を名目ゼロで5年間抑制・維持するという方針は現実的だろうか。

 理論的には、税収の不足分だけの歳出を抑制できれば、財政健全化は達成できる。しかし、税収見積もりが非現実的になっているのと同様に、想定している歳出削減目標も以下で説明するように相当大胆であり、自然体では実現しそうにない。それでも、それを達成しないと、2020年までに基礎的財政収支を黒字化させ、その後に黒字幅を大きく保つことは不可能である。政府の想定しているシナリオで財政再建が容易に達成できるとは思えない。

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井堀利宏(いほり・としひろ)

東京大学名誉教授。政策研究大学院大学教授。1952年岡山県生まれ。74年東京大学経済学部卒業、81年ジョンズ・ホプキンス大学大学院経済学博士課程修了(Ph.D.取得)。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、95年同教授を経て、97年から同大学院経済学研究科教授、2015年に同名誉教授。同年4月より現職。2011年紫綬褒章受章。主な著書に『現代日本財政論 財政問題の理論的研究』(東洋経済新報社、1984年、日経・経済図書文化賞)、『財政赤字の正しい考え方 政府の借金はなぜ問題なのか』(東洋経済新報社、2000年、石橋湛山賞)、『「歳出の無駄」の研究』(日本経済新聞出版社、2008年)、『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA/中経出版)など著書多数。


“現状維持”が最悪の選択である

財政健全化への消極性が若年世代や将来世代に与える影響のほか、財政問題を抜本改革するために必要な社会保障改革、それを実行するのに不可欠と思われる選挙制度改革について、具体案を提示しながら検討していきます。

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