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医療・介護 大転換

保育園問題、介護問題…なぜ政治家は、社会保障の「需給のズレ」を認識できないのか

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第51回】 2016年3月30日
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待機児童問題、
火消しに大わらわの政府

 「保育園落ちた日本死ね!!! どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか――」。

 たったひとつのブログが政府を動かした。安倍首相は、当初「匿名なので確かめようがない」と国会答弁し、素っ気ない姿勢を見せたが、親たちの怒りを買う。保育園増設求める署名がたちどころに約2万7000人分も集まる。「保育園落ちたのは私だ」のプラカードを持つ母親が国会前に揃った。

 驚いた政府は、保育園に入れない待機児童の緊急対策に乗り出している。

 ゼロ歳児から2歳児までが入園できる既存の小規模保育所の定員を20人以上から増やしたり、一時預かりの拡大など基準を緩める方向で検討に入った。保育園自体を増やすには時間がかかるため規制緩和で乗り切ろうという策だ。夏の参院選の焦点になることを恐れて、火消しに大わらわだ。

 安倍政権は「1億総活躍」「女性が活躍する社会」を打ち出し、新施策「新3本の矢」でも「希望出生率1.8の実現」を目標としてきた。保育園への入園児を2017年度末までに50万人分増やす方針も出した。

 ところが、現場では保育園対策に親たちは振り回されている。母親が実家に引っ越してその地域の保育園に子どもを入れるため夫婦別居を強いられることも。やむなく育児休業の延長を会社に申請したり、退職に追い込まれる家庭も多い。

 保育園の絶対的な不足に施策が追い付いていない。社会保障制度の枠内でのサービス供給が需要を満たしきれない現象は、実は、高齢者ケアの施設不足と全く同じである。制度の限界とも言えそうだ。

 しかし、政策当事者や政治家にはこの「需給のズレ」がなかなか認識されていない。なぜなのか。

 答えは明白である。全国的な現象ではないためだ。首都圏を中心とした大都会地域だけが抱える問題だから。人口の集中がなお進む首都圏などと急激な人口減に見舞われている地方では、採るべき社会保障政策は異ならざるを得ない時代を迎えているようだ。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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