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インテルを「環境を支配する企業」に変えたアンドリュー・グローブの卓見

高野研一 [コーン・フェリー・ヘイグループ 代表取締役社長]
【第7回】 2016年4月7日
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Photo:AP/Aflo

 今回はインテルのアンドリュー・グローブを紹介したい。ご存じの通り、今年3月21日、伝説的CEOが79歳で永眠したという訃報が世界中に流れた。ハンガリーに生まれ、ナチスドイツの占領やハンガリー動乱を経験した後、米国へ亡命。インテルを世界一の半導体企業に導いた手腕は、今でも世界中の人から賞賛されている。

 インテルの歴史は3つの時代に分けられる。第一期は1968年から85年までの「メモリ企業」の時代、第二期は85年から98年までの「マイクロプロセッサ企業」の時代、第三期は98年から始まった「インターネット関連企業」の時代である。メモリとマイクロプロセッサは、いずれもコンピュータの中核的な構成要素で、それぞれ記憶装置と演算装置を意味する。この中で、アンドリュー・グローブは第二期のCEOを務めた。

 グローブは全米で最も優れた経営者のひとりともいわれる。それは、この第二期において、インテルがパソコンのプラットフォームを支配する企業として飛躍する可能性を見出したからだ。

メモリ事業で日本に覇権を奪われ
マイクロプロセッサに転換

 インテルは元々、MOSプロセス技術や製造技術を成功要因として、メモリ事業を他社に先駆け成功させた。ここでグローブは集積度や歩留まりを高める上で大きな貢献をする。ところが、70年代に入ると、半導体製造装置の開発投資に巨額の資金がかかるようになり、製造技術における強みが、ニコンやアプライド・マテリアルズ社のような半導体製造装置メーカーに移っていった。マイケル・ポーターの5Fに沿って言えば、上流のサプライヤーにパワーシフトが起こったわけだ。

 こうした環境変化は、インテルを窮地に追い込むことになる。製造装置を買うことで強みを獲得した日本の半導体メーカーが、急速にメモリ事業において台頭していったのだ。いち早く成功要因を確立した企業であっても、環境変化から無傷でいることはできないということだ。

 ここに至って、インテルはメモリ事業からの撤退を決断する。メモリを成功させた立役者のひとりでもあるグローブにとって、それは断腸の思いであった。いかに天才グローブといえども、過去の成功体験から脱却することは容易なことではなかった。それは次の言葉からわかる。

 「生死を賭けた土壇場になってはじめて、目の前の現実が、長年信奉してきた信条を打ち破るに至った」

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高野研一[コーン・フェリー・ヘイグループ 代表取締役社長]

たかの・けんいち/神戸大学経済学部、ロンドン・スクールズ・オブ・エコノミクス(MSc)、シカゴ大学ビジネススクール(MBA)卒。大手銀行でファンドマネジャーを経験した後、コンサルタントに転じ、マーサー・ジャパン取締役等などを経て現職。『超ロジカル思考』(日本経済新聞社)、『ビジネスリーダーの強化書』(日本経団連出版)、『勝ちグセで企業は強くなる』『グループ経営時代の人材マネジメント』(ともに東洋経済新報社)など著書多数。


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変化が激しく、先が見えない世界でビジネスを行う場合、ロジカルに最適解を求めようとしても出てこないことが往々にしてある。そうした「正解のない世界」を勝ち残ってきたビジネスの天才たちは、どのような能力を持っているのか。我々がロジックを超えた直観力を身につけるには、どうすればいいのか。

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