「成長を急ぐ若手」と「早期育成を目論む会社」。前回は、利害が一致しているように見えて、その実は“すれ違っている”この両者のギャップを指摘しました。今回は、また違った視点から「人の成長」について考えてみます。そもそも、会社として若手にいかなる成長を期待しているのか。また、それは「一つのモノサシ」で計られるべきものなのか。もっと言えば、「一つのモノサシ」で計り続けた結果、職場は人が育ちにくい環境になってしまったのではないでしょうか。

ビジネスマンは階層化し
その階層は固定化する

 リーマンショック後、多くの企業は新卒採用を絞り込み、即戦力の中途採用へとウェイトを移しています。会社に連綿と受け継がれるDNAを伝承することより、とりあえず目の前の危機を乗り越え、業績を回復することを優先している、と言えるでしょう。

 企業のリアリズムとして、やむを得ざることかもしれません。しかし、企業の長期的な成長という観点からそれが正しいのかどうか、私は、一抹の懸念を覚えます。

 一握りのプロフェッショナルが流動して、業種を問わず企業業績を立て直し、そして去っていく。そこまで高度なプロフェッショナル・スキルを持たない、しかし無能ではない多くの社員はそのサポートに回り実行部隊になり、ルーチンワーク、バックアップ業務は、次々に非正規雇用のワーカーに割り振られていく。

 その時、企業は一定のパフォーマンスを上げ続ける「成長する組織」になっているでしょうか。ビジネスマンは働きがいを見出し、幸せと豊かさを感じることができるでしょうか。おそらく経済的にもマインド面でも、いま以上にビジネスマンは階層化し、その階層は固定化することになるでしょう。企業のパワーはどうなっているか、予測がつきません。