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幸せになる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え2
【第3回】 2016年5月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
岸見一郎 [哲学者]

いま、愛について考えることの意味
平野啓一郎×岸見一郎 対談

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アドラー心理学の入門書『幸せになる勇気』の著者で哲学者の岸見一郎さんと、長編小説『マチネの終わりに』を上梓したばかりの作家・平野啓一郎さん。哲学と小説。方法は違えど、どちらの本も愛を正面から問うている。いま、愛について考える意味は何なのか? 『マチネの終わりに』に描かれた愛は、アドラー的にはいかに解釈できるのか。お二人に語り合っていただいた。(構成:柳悠美、撮影:山下覚)

ハッピーエンドの
「その後」を描く

岸見一郎(以下、岸見) 恋愛小説は若い人が読むというイメージがありましたが、主人公のクラシックギタリストが38歳、ヒロインが40歳なので新鮮でした。どうしてこの年代にしたのですか。

平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)
1975年愛知県蒲郡市生まれ。北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。著書は小説『葬送』『滴り落ちる時計たちの波紋』『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)『ドーン』(ドゥマゴ文学賞受賞)『かたちだけの愛』『空白を満たしなさい』『透明な迷宮』、エッセイ・対談集に『私とは何か「個人」から「分人」へ』『「生命力」の行方~変わりゆく世界と分人主義』等がある。2014年、フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。

平野啓一郎(以下、平野) 自分が40歳になったからというのもあります。若い頃は、職業や家族がアイデンティティを占める割合としてまだ小さく、恋愛の比重が大きくなりがちです。一方、40前後になると仕事、結婚、出産、子育てなどが複雑に絡んできて、気持ちはあってもまっすぐ進めないこともある。そういう大人の恋愛を書きたいと思いました。

岸見 妻子がいても恋をすることもあるかもしれない。いま実際に自分がそういう状況でないとしても、誰にでも起こり得る物語として面白く読みました。

平野 ありがとうございます。

岸見 アドラーは、人生のタスクとして仕事・交友・愛がバランスよくあるべきだとしています。そのなかでも愛は最も重要なテーマ。私の講演会でも一番多いのが恋愛についての質問です。誰にも無視できないテーマですが、私たちが愛についてわかっているかといえば、決してそうとは言えません。

平野 僕は恋愛を、恋と愛に一旦分けて考えるんです。恋は、相手を求める感情が激しく高ぶっている状態で、愛は、結ばれた関係の継続性のほうが問題になるのではないでしょうか。

岸見 そうですね。ハッピーエンドで終わるラブストーリーはたくさんありますが、この小説は、結ばれた後どうなっていくかに重きがおかれている。アドラーが注目するのもそこで、つまりハッピーエンドの「その後」なんです。そして、それは情熱だけではうまくいきません。

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岸見一郎[哲学者]

きしみ・いちろう/1956年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの“青年”のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。


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