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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

日本が目指すべき国家戦略は
「難病治療の最後の砦」

鈴木寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]
【第43回】 2016年5月23日
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今医療の世界で
何が起きつつあるのか?

 こんにちは。鈴木寛です。

今後日本が国家戦略として考えるべきは、難病治療の「最後の砦」となることを目指し、日本の医療のブランドを確立することに他ならない

 今回は連載第42回に引き続き、医療イノベーションについてのお話をしたいと思います。

 実は、今の医療の世界は革新的な時期にあります。20年前に起きたIT革命に匹敵、またはそれを上回るインパクトになると思われます。つまり、複雑で高度な情報処理機能をもつコンピュータが、技術の発展によって価格が低廉化し、操作が容易になったことによって、政府や大企業や大きな大学でなくても、一般市民でも手に取れるようになりました。

 今やスマホには40年前のスパコン並みのパワーがあると言えるわけで、これは当時と比べてまさに革命的な現象です。さらにそれを仲介とし、インターネットによって情報が世界中とつながり、かつてない情報社会が到来しました。それと同じことが、今の医療の世界でも起ころうとしているのです。これまでは、ある病気に効く1種類の薬を開発し、それを何百万人という世界中の同じ病気の患者に適用するのが一般的でした。このような薬を開発できるのは、メガファーマーと言われる世界有数の多国籍企業に限られていました。

 しかし、個別化医療と再生医療が誕生したことで、万人ではなく個人個人の身体的特徴――その人の遺伝子・ゲノムのタイプに応じた治療ができるようになってきたわけです。情報革命は、コンピュータの利用とインターネット接続を個人が直接行えるようになったことで、「Information Processing」(情報処理・加工)とデジタルコミュニケーションのpersonalize化が進みましたが、今進行している医療革命では「Cell Processing」(細胞加工)と治療法の選択・組み合わせのPersonalize化が進展しています。

 再生医療とは、けがや病気で不調になった臓器や組織を、正常細胞からつくり直して失われた機能の一部を補うことを目的とした医療です。個別化医療とは、患者のゲノム(遺伝子情報)を解析して、それぞれのゲノムに応じて、それぞれ個別の治療をしていくというものです。ゲノムの解析はビッグデータの分析なので、ITの活用が欠かせません。

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鈴木 寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官として大学入試改革などを担当している。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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