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トヨタの自工程完結 ウェブ版
【第14回】 2016年5月25日
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佐々木眞一

トヨタの自工程完結で
いつも妥協のない仕事ができる
トヨタの自工程完結のメリット7~8

『トヨタの自工程完結』の考え方でオフィスの仕事を変えていくと、どんなメリットが得られるのか。今回は、私たちの考える7、8番目をご紹介します。

[メリット1] 部分最適がなくなる
[メリット2] 上司が進捗確認できるタイミングを作れる
[メリット3] 上下左右のコミュニケーションが深まる
[メリット4] 各部署の固有の強みを最大限に活かせる
[メリット5] 部門内の情報共有が進む
[メリット6] 会議が減る
[メリット7] 理不尽なところが見える
[メリット8] 失敗が減り、妥協がなくなる
[メリット9] 生産性が上がる
[メリット10] モチベーションが上がる

[メリット7] 理不尽なところが見える

 「自工程完結」の考え方で仕事を進めることは、つまるところ、自分の仕事のやり方や、組織の仕事のやり方をゼロベースで見直すことです。お客さまのためという前提で「目的・ゴール」を設定し直し、「最終的なアウトプットイメージ」をしっかりと持ち、「プロセス/手順」を洗い出し、正しい意思決定をするために「判断基準」や「必要なもの」を定めていく。

 この一連のポイントを通してやると、気づくことがたくさんあります。一つは、今までの仕事には理不尽なことがたくさんあった、ということです。「どうしてこれがこうなのか」ということをあらためて追求してみると、実は何のやるべき理由もなかった、というケースも少なくありません。

 ただ昔から続いていたから、という理由だけで、やらなければいけないとされていた大変な仕事もあったりしました。「自工程完結」では、理不尽なところがすべて見えてくるのです。

 あるとき面白い例え話を聞きました。これこそまさに、「自工程完結」の考え方を用いたら、見えてくる理不尽だと思いました。あるアメリカ人家庭の、七面鳥料理の話です。

 その家の娘は、「わが家の七面鳥料理のレシピでは、尻尾と頭はちょん切ってオーブンに入れる」と親に教えられていました。しかし、娘は疑問に感じたのです。どうして尻尾と頭をちょん切って入れるのか、と。

 娘はお母さんに尋ねました。すると、お母さんは言いました。

 「私にはわからないわ。あなたのおばあちゃんにそう教わったから、そうしているだけよ」

 そこで娘は、おばあちゃんのところに聞きに行くことにしました。おばあちゃんは言いました。

 「よくわからないわね。おそらくそうしたほうが、七面鳥の中に詰めた野菜やら何やらから出たガスがうまく抜けて、おいしくなるんじゃないのかしら」

 娘はなるほど、と思いました。ガスがよく抜けるなんて、面白い。これは誰が考えたのかと聞くと、ひいおばあちゃんだと言う。そこで娘は、ひいおばあちゃんにも聞きに行きました。ひいおばあちゃんは言いました。

 「違うのよ。昔はわが家のオーブンは小さかったから、七面鳥が丸ごとオーブンに入らなかったの。だから、頭と尻尾を切ったのよ。オーブンに入るなら、切る必要なんかないわよ」

 トヨタには、たくさんの「七面鳥の話」が転がっていました。おそらく日本の会社にも、たくさん転がっていると思います。

[メリット8] 失敗が減り、妥協がなくなる

 新しい考え方による仕事の進め方で、最も大きなわかりやすい効果は、これだと思います。失敗が減る。ミスが減る。作り直しや、やり直しが減る。「自工程完結」の考え方によって、コミュニケーション・ミスが大きく減るからです。そして、正しい情報や「判断基準」のもとで意思決定ができ、仕事を進められるからです。

 さらに、私が強い関心を持ったのは、失敗が減ったことで、仕事に向かう姿勢が大きく前向きになったことです。

 みんな、悪いものを作ったり、評価されないものを出そうとは思っていないのです。ところが、結果的にそういうものができたり、評価されなかったりして、嫌な思いをしていた。

 こうしたネガティブなことが減っていくと、ポジティブなほうに意識と力が向かうようになるのです。

 例えばかつて工場では、技術的に難易度が極端に高く、正しくできるものは八割、九割でいい、不良品は仕方がないから廃棄すればいい、そんな考え方にならざるをえない部門がありました。当時の技術レベルからすれば仕方がない面もたしかにあったのです。もともと世界の標準でも、そのくらいの歩留まりになる仕事だったのです。

 ところが、「自工程完結」の考え方で仕事をするようになってから、それでは納得できなくなりました。科学的アプローチを活用することで、もっと上を目指したい、一〇〇パーセントを目指したいと変わっていった。

 「自工程完結」の考え方で仕事をすることは、つまり、一〇〇パーセントの仕事をするにはどうすればいいか、を考えることです。だから、一〇〇パーセントを目指そうという空気が広がっていく。

 そして一〇〇パーセントへの道が見つかると、やはり楽しくなる。結果が出るからです。そして一〇〇パーセントをますます追いかけたくなる。あらゆるところで、一〇〇パーセントを目指そうとなっていきました。

 これはオフィスでも同じです。成功体験を持つと、それを広げたくなる。結果として、妥協しない仕事が追求されるようになっていったのです。

(次回は、6月1日公開予定です)

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佐々木眞一 [トヨタ自動車株式会社 顧問・技監]

1970年3月 北海道大学工学部機械工学科 卒業
1970年4月 トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社
1990年4月 トヨタ モーター マニュファクチャリング UK 株式会社 品質管理部長
1995年1月 トヨタ自動車株式会社 堤工場 品質管理部部長
2001年6月 取締役就任
2003年6月 常務役員就任
2004年6月 トヨタモーターエンジニアリング・マニュファクチャリングヨーロッパ株式会社 取締役社長
2005年6月 専務取締役就任
2005年10月 トヨタモーターヨーロッパ株式会社 取締役社長
2009年6月 取締役副社長就任
2013年6月 相談役・技監就任
2015年11月 著書『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』上梓
2016年7月 顧問・技監就任


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