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トヨタの自工程完結 ウェブ版
【第12回】 2016年5月12日
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佐々木眞一

トヨタの自工程完結を使うと、
オフィスはどのように変わるのか?
トヨタの自工程完結のメリット1~3

前回までにお伝えした『トヨタの自工程完結』の一連の新しい考え方によって仕事に取り組めば、仕事はどんなふうに変わっていくのか。どんなメリットが得られるのか。この考え方がもたらすメリットを挙げておきたいと思います。

 私たちが実感している主なメリットを上げてみると、以下のようなことがあげられそうです。今回は、この中のメリット1~3を紹介します。

[メリット1] 部分最適がなくなる
[メリット2] 上司が進捗確認できるタイミングを作れる
[メリット3] 上下左右のコミュニケーションが深まる
[メリット4] 各部署の固有の強みを最大限に活かせる
[メリット5] 部門内の情報共有が進む
[メリット6] 会議が減る
[メリット7] 理不尽なところが見える
[メリット8] 失敗が減り、妥協がなくなる
[メリット9] 生産性が上がる
[メリット10] モチベーションが上がる

[メリット1] 部分最適がなくなる

 組織というのは、どうしても内向き、内向きになっていってしまうものです。いつしか、自分たちの部門の利益のためのアクションが増えていくようになる。しかし、それは仕事の本質ではありません。

 まずは「目的・ゴール」をしっかり理解することで、自分たちは何のために仕事をするのか、この部門は何のためにあるのか、ということが理解できるようになります。部門のために仕事があるわけではない、ということに気づけるということです。

 結果として、部分最適のような動きは大きく減りました。結果が出てこないことに対して、ほかの部門に責任をなすりつけたり、いがみあったりするようなこともなくなっていきました。全体として同じ「目的・ゴール」に向かっているのだ、ということがはっきりと見えてくるからです。

 そしてもう一つ、「プロセス/手順」を洗い出す段階では当然、組織内だけでは作業は完了しません。実は他の多くの部門と連携しながら仕事を行っている、ということに、プロセスを洗い出していく中で気づくことができるのです。

 他部署との協力あっての自分たちの部門。その事実に気づけるということです。そうすると、自分たちさえよければいい、という発想はどんどんなくなっていきます。

[メリット2] 上司が進捗確認できるタイミングを作れる

 部下にお願いしていた仕事が思っていたように上がってこない。これは上司にとって、最も大きなストレスの一つでしょう。しかし、「自工程完結」の考え方で仕事を進めていくと、これを大きく減らすことができます。

 「言わなかった」「聞かなかった」という行き違いも防ぐことができます。上司はイメージどおりのものが上がってくるし、部下は上司が求めている仕事をすることができます。

 そしてもう一つ、上司が部下の仕事を進捗確認するときに、一連のポイントが使えるのです。もちろん、ポイントごとに進捗確認をしてもいいわけですが、例えば、仕事を委ねたとき、この部下ならどこまで任せられるのか、によって、どのポイントで進捗確認するか、変えることができます。

 「判断基準」だけ確認する部下がいてもいいですし、「プロセス/手順」から確認し、ずっと相談しながら進めたほうがいい部下もいる。いずれにしても、進捗確認するタイミングが確実にあることで、安心して部下に仕事を委ねることができるようになるのです。

[メリット3] 上下左右のコミュニケーションが深まる

 生産性が上がらない。モチベーションが上がらない。その要因の一つに間違いなくあるのが、コミュニケーション不足だと感じていました。上司と部下の関係もそうですし、部門間もそうです。

 しかし、新しい考え方で仕事を進めていくことで、コミュニケーションを深めることができます。上司は部下に仕事をお願いするときに、「目的/ゴール」を語るようになる。

 「最終的なアウトプットイメージ」をしっかり伝えるようになる。「プロセス/手順」や「判断基準」「必要なもの」について話し合うようになる。これで必要十分な情報交換ができるのです。「聞いていなかった」というセリフが出てこなくなる。

 これは部門間でも同じです。「プロセス/手順」を作っていくことでコミュニケーションの機会が増えるのです。このプロセスはどういうものなのか、かかわる部門に問い合わせたりすることで、コミュニケーションが生まれる。顔見知りになっていく。部門の壁を低くするきっかけにできる。風通しがよくなっていく。

 また、仕事を進める過程で、別の部署と同じ「情報」や「判断基準」を持たなければいけない仕事もあります。それこそ、アメリカとヨーロッパでは、ビルの「ファーストフロア」は異なります。「ファーストフロアで待ち合わせ」と言うと、ヨーロッパの人は二階で待っているし、アメリカ人は一階で待っている。こういうときは、擦り合わせていかないといけない。

 異なる「情報」や「判断基準」で判断していたら、部門間で齟齬が生まれてしまうのは当然です。しかし、コミュニケーションを交わしていくことで、認識を合わせることができる。言ってみれば、「共通言語」が増えていくのです。

自工程完結の考え方を用いることで、コミュニケーションが深まっていく。実はこれは、事前には予想できなかった大きな効果でした。

(次回は、5月18日公開予定です)

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佐々木眞一 [トヨタ自動車株式会社 顧問・技監]

1970年3月 北海道大学工学部機械工学科 卒業
1970年4月 トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社
1990年4月 トヨタ モーター マニュファクチャリング UK 株式会社 品質管理部長
1995年1月 トヨタ自動車株式会社 堤工場 品質管理部部長
2001年6月 取締役就任
2003年6月 常務役員就任
2004年6月 トヨタモーターエンジニアリング・マニュファクチャリングヨーロッパ株式会社 取締役社長
2005年6月 専務取締役就任
2005年10月 トヨタモーターヨーロッパ株式会社 取締役社長
2009年6月 取締役副社長就任
2013年6月 相談役・技監就任
2015年11月 著書『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』上梓
2016年7月 顧問・技監就任


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