「採用選考の指針」改定で2年連続のスケジュール変更となった2017年新卒採用。若年労働者不足を背景に継続する「売り手市場」の下、学生の意識はどう変化したか。(ダイヤモンド・ヒューマンリソース首都圏営業部長 高村太朗)
政府の方針を受けて日本経済団体連合会が定め、2016年新卒採用から適用された「採用選考に関する指針」。しかし、ふたを開けてみると経団連に非加盟の外資系やIT系企業、中堅・中小企業は、この変更に関係なく採用活動を実施した。企業の足並みはそろわず、結果として就職・採用活動は長期化、加えて一部の企業によるいわゆる「オワハラ(就活終われハラスメント)」が社会問題化するなど、就職・採用戦線は混乱した。
こうした状況を受け、経団連は17年新卒採用に向けて「指針」を改定。学習時間確保の観点から採用広報開始時期は3月のまま変更せず、選考開始時期を8月から6月へと2カ月前倒しすることで長期化の是正を図る、2年連続のスケジュール変更となった。
厚生労働・文部科学両省が毎年発表している大学生の就職内定率は87.8%(16年卒。2月1日時点)と5年連続で改善し、リーマンショック以来8年ぶりの高水準を回復。年明け以降の円高、株安などにより企業の景況感は下振れしているものの、少子高齢化による若年労働者の不足を背景とした企業の採用意欲は底堅く、17年新卒でも「売り手市場」は続いている。短期決戦をにらみ多くの学生と接点を持つため、採用広報解禁直後から企業は会社説明会を連日開催。積極的に採用活動を始めた。
こうした環境下で39回目を迎えた就職人気企業ランキング調査は「大手志向」が継続する中、文理男女別全てのカテゴリーで総合商社に人気が集まる結果となった。ランキング結果を基に詳しく分析していこう。
政府の方針を受けて日本経済団体連合会が定め、2016年新卒採用から適用された「採用選考に関する指針」。しかし、ふたを開けてみると経団連に非加盟の外資系やIT系企業、中堅・中小企業は、この変更に関係なく採用活動を実施した。企業の足並みはそろわず、結果として就職・採用活動は長期化、加えて一部の企業によるいわゆる「オワハラ(就活終われハラスメント)」が社会問題化するなど、就職・採用戦線は混乱した。
こうした状況を受け、経団連は17年新卒採用に向けて「指針」を改定。学習時間確保の観点から採用広報開始時期は3月のまま変更せず、選考開始時期を8月から6月へと2カ月前倒しすることで長期化の是正を図る、2年連続のスケジュール変更となった。
厚生労働・文部科学両省が毎年発表している大学生の就職内定率は87.8%(16年卒。2月1日時点)と5年連続で改善し、リーマンショック以来8年ぶりの高水準を回復。年明け以降の円高、株安などにより企業の景況感は下振れしているものの、少子高齢化による若年労働者の不足を背景とした企業の採用意欲は底堅く、17年新卒でも「売り手市場」は続いている。短期決戦をにらみ多くの学生と接点を持つため、採用広報解禁直後から企業は会社説明会を連日開催。積極的に採用活動を始めた。
こうした環境下で39回目を迎えた就職人気企業ランキング調査は「大手志向」が継続する中、文理男女別全てのカ テゴリーで総合商社に人気が集まる結果となった。ランキング結果を基に詳しく分析していこう。
三菱商事が3年ぶりの1位に返り咲いたほか、伊藤忠商事(2位)、三井物産(3位)、住友商事(5位)、丸紅(6位)と総合商社がトップ10に5社入り、前年調査に続き総合商社の強さが際立った。大手総合商社は、直近の3月決算で資源分野の大幅な減損を計上したが、世界を舞台に活躍する商社パーソンへの憧れや、幅広い事業分野への評価は依然として高い。各社共にインターンシップの積極的な導入や経営トップ層が登壇する自社セミナーを開催するなど、学生との接触機会を増やしていることも人気継続の要因といえる。
1位の三菱商事は、3月から「社員との交流会~MC Career Development Cafe~」を複数回開催しているほか、採用ホームページで公開している「OB/OG訪問受付センター」が特に好評だ。同社では、社員の生の声を通じて会社の雰囲気や具体的な業務内容、社員の思いや志などを学生に知ってもらうため、先輩社員が少ない大学の学生にも配慮し、ホームページを通じてOB/OG訪問の機会を提供。業績面では創業以来初の連結赤字になったものの、通期営業キャッシュフローは業界トップと地力は強く、丁寧な情報提供の姿勢と相まって人気を集めたと思われる。
2位の伊藤忠商事は、社員1人に対して学生5~6人という少人数での座談会形式のセミナー「I-CIRCLE」のほか、大規模なスペシャルセミナーを開催。参加者からは「他の商社と比較して、自社の特徴がどこにあるのか、分かりやすかった」「企業としての理念や思いを強く感じられ、具体的な数字の上での強みにつながっていると感じた」といった声が聞かれた。非資源分野の比率が高く、直近決算で大手総合商社の連結純利益で初のトップとなったことや、「朝型勤務」など話題性の高さも評価されたと思われる。
4位にランクインした東京海上日動火災保険をはじめ損害保険業界は、前期決算で各社そろって過去最高益を更新するなど好調な業績を背景に、三井住友海上火災保険(23位→10位)、損害保険ジャパン日本興亜(20位→17位)と軒並み順位を上げた。大幅に順位を上げた三井住友海上火災保険は、内定者が企画・運営する「内定者Talk Session」を手始めに、採用担当者がパネルディスカッションを行う「MSIセミナー」、社員と懇談できる「MSI Talk Session」、地元で働きたい学生に対応する「Uターン就職セミナー」と多様なセミナーを連日開催。参加者からは「内定者の模擬面接で丁寧なフィードバックを頂けた」「先輩に話を聞いて、自分が働くビジョンを描けた」といったコメントが聞かれ、学生の志向に応じた情報提供が好評を得た。
その他トップ10には三菱東京UFJ銀行(7位)、みずほフィナンシャルグループ(8位)、三菱UFJ信託銀行(9位)と大手銀行がランクインしている。
一方で大手メーカーは、サントリーグループ(11位)を筆頭に食品は健闘したが、トヨタ自動車(26位)を除いて電機・自動車はベスト50から姿を消した。非メーカーと比べて文系の採用数が少ないことに加え、入社後に自身が活躍する姿をイメージしづらいことも影響していると思われる。