創業30年目の今年、「30年後に時価総額200兆円規模」や「グループ企業を5000社にする」などの壮大なスケールの「新30年ビジョン」をぶちあげた孫正義ソフトバンク社長。その稀代の経営者と異色企業を大解剖した「週刊ダイヤモンド」7月24日号の特集「破壊王・孫正義のソフトバンク」に掲載されたインタビューを全文公開します。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部、池冨仁)
ソフトバンク社長 1957年、佐賀県生まれ。高校中退後、米カリフォルニア大学バークレー校卒業。79年、米国でソフトウエア会社を起業。帰国後の81年、24歳で日本ソフトバンク(現ソフトバンク)を設立。94年の店頭公開以降は、“日本を代表するベンチャーの雄”として知られてきたが、 2010年9月には創業30周年を迎える。
Photo by Toshiaki Usami
─ソフトバンクと言えば、日本を代表する数あるベンチャー企業の一つでした。それが創業から30年の現在、国内企業の2009年度の連結営業利益のランキングでは、4658億円で3位に入りました。1位のNTT持株会社の1兆1176億円には、2位のNTTドコモの8342億円が含まれているので、“実質的に2位”となります。いつの間にか、そこまで来ていることを、孫さんはどのように受け止めていますか?
結果的にその位置にいますが、一瞬でも気を抜くと、いつでも下に落ちてしまいます。ですから、常に油断はできません。
また、偶然うまくいったというのは、僕はいやなんです。ランキングの上位に入ることを狙って、1回きりのチャンスでなにかやるということではなく、“持続性”のあるかたちで、事を成していきたい。これは、坂本龍馬の「世に生を得るは事を成すにあり」(司馬遼太郎(しば・りょうたろう)著『竜馬がゆく』より)の精神です。
─持続性のあるかたちとは、具体的にはどのようなものですか?
その大きな“方向性”を示したものが、6月25日の株主総会後に発表した「新30年ビジョン」なのです。ソフトバンクは、創業30年目の今年、300年先の世界を見据えた“これからの30年のビジョン”を打ち出しました。
振り返ってみれば、1981年にソフトバンクの前身となる会社を創業したときにも、大風呂敷を広げていました。当時、ほとんどの人は、僕のことを「なんという戯言を言うヤツだ」と考えていたでしょうし、本気で信じてくれる人は少なかったと思います。
だけど、僕自身は、創業1日目から、「デジタル情報革命を実現する」と心に誓っていました。これまでの30年間、そのことを絶対に成し遂げてみせると考えて、無我夢中で突っ走ってきました。
もちろん、その間はラッキーなこともあれば、危険なこともありました。それでも、少しずつ夢の実現に近づいてきたのだと思っています。実際、事業をやっていると、想像もできないようなことが起こるものです。それも、次から次へと起こる。
だから、今回のように「ソフトバンクが国内の連結営業利益で3位になった」というような場合には、神妙な顔をして「図らずもそうなりました」と謙遜するのがよいのかもしれません。ですが、図らずして成功できるほど、世の中は甘くない(笑)。
どのようなことでも同じだと思いますが、やはりなにかを志して、その実現を目指さないことには、なにも始まりません。実際、やってみるとわかりますが、難しいことのほうが多いでしょう。