日本と中国との民間対話の舞台である「第6回東京―北京フォーラム」は8月末、都内で開催され、「政治」や「安全保障」、「メディア」などの5つの対話に延べ約2500人の両国の有識者が出席した。

 この対話は、筆者が代表を務める日本のNPO法人、言論NPOと中国の主要メディアの一つ、中国日報社が毎年、北京と東京で交互に共同で行っているものだが、それに先立ち私たちは日中共同の世論調査を実施し、その結果を公表している。

 中国で共同の世論調査を開始したのは、2005年、中国の主要都市に広がったあの反日デモ直後のことである。そして今回の調査が6回目になる。その内容は、この「東京-北京フォーラム」の場でも報告され、多くの議論にこの世論調査の結果が使われた。

 中国で世論調査を行うことは、それ自体そう簡単な話ではない。6年前、筆者は何度か中国の関係者に相談したが、世論調査の話を持ち出すと会議が途中で打ち切られたり、不機嫌な顔をする中国人も多かった。当時、外務省の高官に「中国で世論調査するなんて、捕まってもいいのか」と警告されたこともある。今でも、それが冗談なのか、本気だったのか、筆者にはよく分からない。 

 それでもわれわれが、この調査にこだわり、説得を続けたのは、あの反日デモを見て、中国の国民は日本のこと、日本人をどう理解しているのか、どうしてもそれが知りたかった。それが分からなければ、本当の意味で両国民の相互理解は進まない、と考えたからだ。

 そして、この世論調査は、同じタイミングでわれわれが北京で立ち上げた、「民間対話」のための研究材料として、なんとか了承された。それ以来、この調査は、中国国民の全般的な意識の動向を探る唯一のデーターとして、両国や世界の主要なシンクタンクが引用する、貴重な調査となっている。

 なお、日本側の世論調査は、日本全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に6月16日から7月2日、訪問留置回収法(調査票を対象者に渡し、後日訪問して回収する方法)により実施された。有効回収標本数は1000である。 

 中国側の世論調査は、北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市で18歳以上の男女を対象に、6月25日から7月9日の間で実施され、有効回収標本は1617、調査員による面接聴取法によって行われた。標本の抽出は、上記の5都市から無作為に調査世帯を選ぶ多層式無作為抽出方法により行われている。

 日本ではこのほかに世論調査と同じ内容で有識者(回答は500人)、中国では6月25日から7月9日の間に、北京大学、清華大学、中国人民大学、国際関係学院、外交学院の学生を対象に世論調査と同じアンケートを行い、1007人から回答を得た。