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日本に巣食う「学歴病」の正体

「東大卒社員」は実際のところ何がスゴイのか?

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第25回】 2016年7月5日
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東大卒社員について
語られない社内の「足跡」

よくも悪くも、世の中の会社員は「東大卒」という肩書きを持つ人に嫉妬にも似た羨望の眼差しを向けがちなものだ。東大卒社員は実際のところ、何がスゴイのだろうか

 東大出身の社員は企業に入社した後、どのようなキャリアを積んでいるのか――。これは、多くの会社員にとって関心のあることだろう。よくも悪くも、世の中の会社員は「東大卒」という肩書きを持つ人に嫉妬に近い眼差しを向けがちなものだ。

 そうしたこともあるためか、雑誌などのメディアで東大卒のビジネスパーソンが取り上げられることも多い。しかし、そうした記事を読むと、彼らの現在の仕事や役職などは紹介されているものの、「入社後の足跡」がほとんど取り上げられていないことに気づく。彼らはどのような理由やいきさつで入社し、配属され、時には人事異動となったのか。そうした経歴が見えてこない。肉声や素顔がわからないことが多いのだ。だからこそ彼らは、世間からイメージ先行の評価をなされることも多い。

 東大卒社員の動向を知ることは、企業社会における学歴の意味や価値などを考えるための一助になることは確かだ。そこで今回は、東大卒社員のキャリア形成に着眼した取材を企業に対して行なった。特に配属や人事異動を中心に尋ねた。昇格については、同期生などと比べて優劣が明確になる以前の時期の社員について聞くようにした。この時期が、学歴の意味を考える際に最も適していると考えたからだ。

 もちろん、今回の取材だけですべてを正確に判断することはできないが、東大出身の社員の入社後の「足跡」を知る上で1つの参考にはなるはずだ。

 取材を依頼したのは、アサヒグループホールディングス(アサヒビール)だ。次の条件を満たしていると思えたからである。

(1)大企業であること
(2)人事・賃金制度が大半の社員の意識に浸透していること
(3)社員の定着率が高いこと
(4)全社員に占める東大卒社員の比率が低いこと
(5)人事・賃金制度を取材者である筆者がある程度、心得ていること
(6)ここ5年の間に取材をした経験・回数などが5回以上であること

 1~6までの条件をクリアしていないと、偏った内容の取材になる恐れがあり、1人の社員のキャリアを記事として明確に表すことはできないと思った。また、実名で紹介することもできないと判断した。

 広報担当者から、IR部門のマネジャーである鷲森良太さん(38歳)を紹介された。1時間半にわたり、ヒアリングをした。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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