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日本に巣食う「学歴病」の正体

「不遇な東大卒社員」はなぜ生まれ続けるのか?

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第7回】 2016年2月23日
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将来を約束されたはずなのに――。
不遇な東大卒社員が生まれる背景

将来を約束されていたはずなのに、なぜか不遇なポジションにいる東大卒社員を、見かけたことがないだろうか。彼らはなぜ、出世コースを外れてしまったのか

 日本の最高学府の最高峰・東大法学部――。

 ここを卒業した多くの人が、中央省庁、政治、実業界、アカデミズム、ジャーナリズムなどの最前線で輝かしい実績を残している。「自称・一流大学」ではなく、誰もが認める一流大学だけのことはある。

 ところが、多くの卒業生が活躍する一方で、組織において活躍できず、侮辱や嘲笑の対象にされている人もいる。日本の最高学府と言われる東大卒の中から、なぜそのような人が一定割合生まれるのだろうか。これは企業の会社員の中で、長年「謎」として語られてきたことでもある。今回は、ある企業に勤めている1人の男性を例に出しながら、不遇な東大卒社員が生まれ続ける背景を探ってみたい。

 今回紹介する男性は、「マスコミの東大」と言われる一流の報道機関に就職しながら鳴かず飛ばずで、50歳のとき部下に対して「退職脅迫」をしでかした。これが大きな問題となり、社内では「飼い殺しの扱い」となった。今、雇用延長の社員として退職を目前に控えている。

 なぜ、この男性はそんな行為をしてしまったのか――。その謎を探ると、背景に「学歴病」の存在が浮かび上がってきた。後述するように、世間の会社ではこの男性ほど過激な行動をとる者は少ないだろうが、実は劣等感にさいなまれるあまり、似たような行動に走る人はいるのではないだろうか、と筆者は感じている。


 JR新宿駅から歌舞伎町方面に歩くこと、15分。靖国通りに面する6階建てのビルに、かつて新宿労政事務所があった。現在の、東京都労働相談情報センターである。都庁の出先機関であり、職員が解雇や退職強要などの労使紛争を調停し、解決する。

 十数年前の夏の暑い日、ここにある放送局のグループ会社(正社員300人ほどの番組制作会社)の本部長・東村(仮名)が現れた。東村の管轄する組織内で労使紛争が起きたのだ。部長である坂下(仮名)が、男性社員・田口(仮名)に退職を強く迫った。それは脅迫に近いものだったという。田口は怒り、社内に労働組合がなかったため、新宿労政事務所に訴え、調停が行われた。東村はこの騒動を受け、労政事務所を訪れたのである。

 東村の淡々とした声が室内に響いた。

 「坂下は、もともと重度の心の病になっていて、私どもも困り果てていました。しかしながら、そんな彼への監視を怠り、田口君に不快な思いをさせてしまったことを悔やんでいます。今後は、このようなことがないように、労務管理をきちんとします」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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