2016年度大学入試で最も話題となったのが、東京大学と京都大学がそれぞれ初めて実施した「推薦入試」「特色入試」だった。その結果を振り返りながら、国立大学入試改革のゆくえを展望する。
東大と京大は、これまで一般入試だけで学生を選抜してきた。その両大学が推薦入試、AO入試(京大では特色入試と呼ぶ)を初めて導入しただけに世間の注目はいやが上にも高まった。
推薦入試実施の狙いについて東大は、「学部学生の多様性を促進し、それによって学部教育のさらなる活性化を図ること」と、募集要項で述べている。一方の京大は、山際壽一総長自らが募集要項に登場し、「学力試験だけでは測れない能力をこの特色入試ではぜひ評価したい」と熱く語りかけた。
つまり、両大学とも偏差値エリートだけでなく、多様な学生を受け入れることで学内の活性化を図るのが主たる狙いというわけだ。
果たして結果はどうだったのか。
東大推薦入試は10学部で100人程度の募集人員に対して、出願者は173人、合格者は77人だった。合格者のうち女性が38%で、出身校は関東以外が56%。一般入試では女子の比率が18%ほど、関東以外は約40%だ。「多様性を促進するという目的からいえば、女子と地方出身者が増えたのは東大の思惑通りではないか」。駿台予備学校進学情報センターのセンター長・石原賢一氏はそう語る。
数学オリンピックなど
高すぎたハードル
京大特色入試は10学部で108人程度の募集人員に対して、出願者は616人、そのうち合格を勝ち取ったのは82人で、東大推薦入試よりも狭き門となった。
ただ、学部学科ごとに見ると募集人員、出願倍率ともバラツキが大きい。募集人員は経済学部25人、法学部20人、文学部と理学部が10人であとはすべて1桁。理系は工学部情報学科2人、同地球工学科や薬学部薬学科が3人などおしなべて募集人員が少なかった。
志願倍率は、他大学との併願が可能な後期日程で入試を実施した法学部の16.2倍を筆頭に総合人間科学部5.8倍、教育学部4.2倍、など文系は人気が高く、理系では理学部が11.8倍と唯一2桁となったものの、工学部地球工学科と工業化学科は出願者ゼロとなるなど低調だった。