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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

6児のシングルマザーを襲う生活保護改悪の不条理

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第55回】 2016年7月8日
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第2次安倍内閣が成立して以後、「子どもの貧困」と解消の必要性へ注目が集まる一方、生活保護を含め、社会保障の削減と貧困の拡大が進みつづけた。この間の変化は、シングルマザー世帯に、何をもたらしているのだろうか?

「子どもの貧困」への関心に
虚しさを感じる6児のシングルマザー

6児のシングルマザーであるYさんは、この2年数ヵ月で月2万円も生活保護費が削減されたそうです

 千葉県A市に住むYさん(37歳)は、高校1年~小学4年の6人の子どもとともに生活保護で暮らすシングルマザーだ。

 Yさんは、中学時代に母親を失って以後、一家の主婦業・弟妹の母親業一手に担いながら、高校と保育の専門学校を卒業し、保育士資格を取得した。公務員試験にも合格し、市職員として保育所で働き始めた。しかし結婚した夫から肉体的・精神的DVを受け、経済的にも「搾取」と呼ぶべき扱いを受けた。また、夫が避妊に協力しなかったことから、7年間に6人の子どもを出産した。育児を一手に担ったのはYさんだ。

 夫のDVにより職業・健康など数多くを失ったYさんと、同じく父親からのDV被害を受けていた6人の子どもたちは、生活保護に支えられ、2014年、母子世帯として新しい生活に踏み出すことができた。この経緯は、本連載第14回で詳しく紹介している。

 このとき、大きな障壁となったのは、一家7人が暮らすことのできる住まいを探すことであった。7人世帯に対する生活保護の家賃補助の上限額は、A市では5万9800円。家賃相場がそれほど高くないA市ではあるが、女の子と男の子のスペースを別途確保できる住まいは、その金額では見つけられない。しかし、窮状を知った家主の好意によって、「健康で文化的」の基本といえる住環境が、家賃5万9800円で提供されることになった。当時の住宅扶助(生活保護の家賃補助)の上限額ギリギリである。

 Yさん一家にとって、安倍政権の3年半とは?

 「……『子どもの貧困』に対する関心が、虚しいです」(Yさん)

 安倍政権が成立した2013年6月、「子どもの貧困対策法」が成立。翌2014年8月には、「子供の貧困対策に関する大綱」(本大綱では「子ども」ではなく「子供」と表記されている)が閣議設定された。2013年12月、改正生活保護法とともに成立した生活困窮者自立支援法でも、都道府県は「生活困窮者である子どもに対し学習の援助を行う事業」を行うことができる、とされている(第6条)。

 なぜ、Yさんは「虚しいです」と言うのだろうか? 往年のドラマ「家なき子」の名セリフ「同情するなら金をくれ!」になぞらえれば、「同情する」と「もっと貧乏にする」が、同時進行しているからだ。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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