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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

貧困状態でも生活保護を選べないシングルマザーの葛藤

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第7回】 2015年5月1日
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2人の親がいても、育児は難事業。ひとり親家庭には、育児という難事業を一人で行う困難がある。さらにシングルマザーに対しては、女性ゆえの不利や困難が加わりやすい。

今回は、生活保護より幅広く利用されている児童扶養手当を中心に、シングルマザーの置かれている状況を大づかみに見てみたい。どのようなシングルマザーがいて、どのような経済的支援を利用しているのだろうか?

シングルマザーが支える
母子の「暮らし」とは?

シングルマザーの実態は実に様々だ Photo:milatas-Fotolia.com

 「子どもの貧困問題との関連で、『シングルマザーは、こんなに大変で悲惨』というトーンの報道、あるいは支援者からの訴えが増えています。シングルマザーの困窮はひどくなっていますが、そうかといって、全てのシングルマザーがそういう目で見られたいと思っているわけではありません」

 赤石千衣子さん(「NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長)は、「性差別に抑圧され続け、貧困状態にある母親と子ども」というイメージに傾きがちな私に、にこやかにクギを刺す。

 「私たちのところ、『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』に来るお母さんたちの状況は、本当にさまざまです。子どもさんの数と年齢、職業、収入、学歴、DV被害に遭ったことがあるかどうか……など。私たちは当事者の団体なので、『生活困窮者支援』を前面に出している支援団体に相談に行くシングルマザーの方々に比べれば、平均年収は高いです」(赤石さん)

 1980年代初頭、自身もシングルマザーである赤石さんが設立した「しんぐるまざあず・ふぉーらむ(以下、ふぉーらむ)」は、2003年にNPO法人格も取得。調査研究・政策提言などを行う一方、電話相談・直接支援・交流会・相談会・支援者育成・親子の旅行など、さまざまな直接・間接の支援活動を展開している。

 約400人の会員は、多数のシングルマザー・若干のシングルファザー・支援や応援を行う賛助会員から成っている。シングルマザーたちの背景は、ひとり親になった経緯だけでも、離婚・非婚・未婚・死別とさまざまだ。

赤石千衣子(あかいし・ちえこ)氏。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長。1955年東京生まれ。非婚のシングルマザーとなり、シングルマザーの当事者団体活動に参加。婚外子差別廃止・夫婦別姓選択制などを求める民法改正活動、反貧困活動に関わる。シングルマザーとして生活保護を利用した経験も持つ。著書は『ひとり親家庭』(2014 年 4 月刊行、岩波新書)など。

 「ふぉーらむ」の事務所は東京にあるため、会員の居住地も活動も、関東が中心になりやすい。しかし、年4回発行される会報とインターネット上の交流の場がある他、北海道・岩手・福島・関西・出雲・松山・福岡・沖縄に姉妹団体がある。

 2015年3月10日、「ふぉーらむ」と姉妹団体の全国的な連携により、「子どもの育ちを保障し居場所を広げる支援を求める声明」が発せられた。

 「(川崎中1殺害事件の被害者)上村遼太くんのお母さんの『遼太が学校に行くよりも前に私が出勤しなければならず、また、遅い時間に帰宅するので、遼太が日中、何をしているのか十分に把握することができていませんでした』『今思えば、遼太は、私や家族に心配や迷惑をかけまいと、必死に平静を装っていたのだと思います』という言葉は、多くのひとり親家庭の親と子が置かれている状況を伝えており、私たち母子家庭の親として、いつ私たち親子に起こってもおかしくない事件だと感じ、胸が張り裂ける思いです」

 という書き出しで始まるこの声明は、子どもの貧困・ひとり親家庭の貧困・母子家庭の貧困をデータによって示し、ついで、

 「子どもの貧困対策推進の大綱では、保護者の就労支援として、「家庭で家族が接する時間を確保する。また、貧困の状態が社会的孤立を深刻化させることのないよう配慮する」とありますが、実効的な施策は不十分です」

 と、政府施策の不備を指摘する。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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