2007年に発生したサブプライムショック以降、下落し続けてきた日本の住宅価格だが、今年の夏前からいよいよ本格的に「底打ち観測」が唱えられるようになった。「底打ち」と言えば、家を最も安く買える千載一遇のチャンス。それを見据えて、これまで住宅購入を控えてきた人も多いのではなかろうか。しかし実際、一般人が巷説を正確に読み説くのは至難の業だ。住宅の「真の買い時」はいつなのか? 石澤卓志・みずほ証券チーフ不動産アナリストは、住宅価格はすでに底を打っているものの、価格と物件のクオリティとのバランスを考えれば、「今こそが真の買い時」と指摘する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

いしざわ・たかし/みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。国土交通省、通産省、経団連などの委員や、国連開発機構技術顧問、上海国際金融学院客員教授などを歴任。精緻な分析に定評がある。

――2007年後半に発生したサブプライムショック以降、下落し続けてきた日本の住宅価格だが、今年の夏前からいよいよ本格的に「底打ち観測」が唱えられるようになった。「底打ち」を見据えて、これまで住宅購入を控えてきた人も多い。しかし実際、一般人が巷説を正確に読み解くのは至難の業だ。住宅の「真の買い時」は、いつなのか?

 純粋に「底打ち」と言うなら、東京では住宅販売が顕著に増え始めた今年3月、大阪では同様に今年5月と考えられる。

 東京のマンション市場では、昨年5月頃から販売ベースで底打ちの兆しが見え始めていたものの、新規物件の供給が細っていたため、盛り上がりに欠けていた。マンションの春商戦を控えて有力物件が市場に多く出回るようになったのは、今年の春先からだ。それに合わせて、地価が上昇に転じる地域も出始めた。

――ということは、今年の春先こそが「真の買い時」だったのか?

 一概にそうとは言い切れない。何故なら、住宅の買い時の目安は価格だけではないからだ。業者が物件を売り急いでおり、価格が安くなっているときには、在庫調整の意味合いが強く、物件のクオリティに問題がある場合が多い。逆に高くなったときは、ディベロッパーの供給意欲が高まって優良物件が増加し、より好みの物件を選べる選択肢が増える場合が多い。