この7月10日の参議院選挙で、日本共産党は期待したほどに党勢拡大を果たすことができなかった。しかしながら、まさかの“野党共闘”にこぎつけた日本共産党とはどのような政党なのか。なぜ、日本社会には“共産党アレルギー”が存在するのか。そして、志位和夫委員長は、どのような人物なのか。普段の選挙戦では語られることがないベーシックな部分も含めて、志位委員長に今日の日本共産党について語ってもらった。「週刊ダイヤモンド」(6月25日号)の第1特集「創価学会と共産党」に掲載したインタビューの拡大版をお届けする(本インタビューは、選挙前の6月6日に行われました)。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

――現在、自由民主党の安倍晋三政権と正面から“ガチンコ対決”できる存在として、あらためて日本共産党に対する注目が集まっています。

「決して大企業を敵視していない」共産党・志位委員長に聞くしい・かずお
1954年、千葉県生まれ。東京大学工学部物理工学科を卒業後、80年に日本共産党の東京都委員会に入る。82年に党中央委員会に転じ、90年には同書記長に選出される。93年に衆議院選挙で初当選。2000年、同幹部会委員長となる。幼少時の夢は音楽家になることだった。気分転換はクラシック音楽の鑑賞で、いつも持ち歩くiPadにはたくさんの楽曲や譜面が入っている。愛読書はロマン・ロランの『ベートーヴェンの生涯』。ミュージカルは家族で観る。Photo by Shinichi Yokoyama

 やはり、政権を獲ってからの安倍首相がやってきたことの数々は、「あまりにも危うい」と感じている国民が増えているのだと思います。

 これまで安倍首相は、選挙戦を戦う上ではアベノミクス(成長戦略)一本に絞って進めてきました。そして、いったん多数派となるや、今度は秘密保護法案を強行採決したり、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしたり、さらには安全保障関連法案を強行採決しています。

――日本共産党では、安保法制を“戦争法”と定義していますね。

 私たちは、日本を戦争する国に造り変える安保法制という意味で、戦争法と呼んでいます。この戦争法は、「戦争の放棄」「戦争力の不保持」「交戦権の否認」から構成されている日本国憲法の第9条を破壊する行為だと考えています。

 そうした安倍内閣の暴走が続く中で、①ぶれることなく反対する政党が欲しい、②反対するだけでなく、経済でも外交でも対案を出す必要がある、③野党がバラバラに動くのではなく、結束して安倍政権を倒してほしいとの国民の声が高まっている。全国各地を歩きながら、そういう手応えを感じていました。

 そこで私たちは、「日本共産党も変わらなければならない」と考えるようになりました。例えば、昨年の9月19日午前中に戦争法案が強行採決された直後、その日の午後に野党各党に対して「国民連合政府構想」の実現を呼び掛けることにしました。安倍政権の暴走は、止めなくてはなりません。今は“非常事態”なのですから、ここは互いの政策の違いを脇に置いてでも、全国的な規模で野党5党が力を合わせて選挙戦を戦う。そして、戦争法を廃止に追い込み、立憲主義を回復させる。その大義の下に結束しようということです。実はそこまで踏み込んだのは、日本共産党の94年の歴史の中でも初めてでした。