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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

中国人船長の釈放は正しい決断だった
日中双方が真摯に反省すべき点とは

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第21回】 2010年9月30日
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 秋晴れと思われていた日中間に突然暗雲が立ち込め、政治的な嵐に襲われる直前の様相を呈している。いうまでもないが、中国漁船と日本の海上保安庁の巡視船との接触事件がこの劇的変化をもたらした。

 24日、那覇地検は国民への影響や日中関係などを考慮した上で、29日の拘置期限を前に処分保留のまま中国人船長を釈放した。これが日本国内の空気をさらに険悪なものにした。

 「あしき前例を作った」といった声も上がったが、冷静に考えれば、日本側は非常に妥当な政治判断を下したと思う。実際、米国も、日本が中国人船長を釈放したことを「正しい判断だった」「適切な決定」と評価し、日中間の「緊張が大幅に緩和されると信じている」と語った(広報担当のクローリー米国務次官補)。さらに、「成熟した国家同士が、外交を通じてどう問題を解決するかを示した」とまで評価された。

 その意味では、日本国内のメディアや政治家の一部がどんなにセンセーショナルにこの問題を取り上げようと、日本政府が下したこの政治的判断に対する世界の評価は変わらない。

 一方、それ以外の選択肢があるかどうかも考えてみよう。中国人船長をこのまま拘置、あるいは起訴したら、どういった結果になるのか。おそらく日中関係は修復不可能な状態に追い込まれてしまうだろう。

 日本のGDPがアジア全体の60%を占めていた頃ならいざ知らず、日中関係をそこまで壊してしまったら、中国も大きく傷つくが、いまの日本はおそらく中国以上に苦しい立場に立たされてしまうだろうと思う。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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