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アップルiPadの電子版ニューススタンドに群がる
新聞社・雑誌社が抱く「大いなる不安」の正体

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第115回】 2010年10月6日
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 米アップルがiPadで新聞や雑誌の電子版ニューススタンドを開設するらしい。

 iPadは、ウェブやビデオを見たりする以外にも電子書籍デバイスとして使われることが前提となっている。iPad発売後に開店した電子書籍の書店「iBookストア」には大量の本が揃っている。しかしその一方で、いかなる理由が背景にあったのかは不明だが、アップルは新聞や雑誌の定期購読については「コンテンツアグリゲーター」の役割を積極的には果たしていない。ニューヨーク・タイムズやUSAトゥデイなど各メディアが独自に毎日更新されるiPad版の紙面をアプリとして提供しているのみだ。

 雑誌では、テクノロジー文化を扱うワイアードが数少ない例外として数ヵ月前から1号ごとにiPad向けの有料版を販売している。このiPad版、音声やビデオなどのマルチメディアや3Dで回転できる画像などが盛り込まれていて、いかにも「未来の雑誌はこうだ!」という夢を見せてくれる。「さすがiPad」「さすがワイアード」と思わせる。

 ところが、肝心の人気は、さっぱりだ。

 1号あたり4ドルという価格設定のせいか、モノ好きな読者以外に広がっていかない。なにせプリント版ならば、今どきのアメリカの雑誌年間購読料は10ドルが当たり前。ウェブで見ればフリー(無料)。いくらiPad用に美しくフォーマットされているからと言って、ちょっと仕掛けがあるだけのものにそんな高いお金を払う読者は米国にはいない。

 というわけで、iPadは雑誌や新聞を読む最適デバイスとしての前評判を得ながらも、なかなかその目標を達成できないでいた。新聞社や雑誌社も、iPadがコンテンツ有料化の救世主になるのではと期待していたのだが、アップルが新聞や雑誌の定期購読サービスのようなアイディアに対してなかなか首を縦に振らず、iPad発売後何ヵ月間も話し合いが硬直状態に陥っていた。

 それが、最近はアップルが積極的に新聞、雑誌各社に誘いをかけているという。交渉相手は、ニューズ・コーポレーション(ウォールストリート・ジャーナルの発売元)、タイムワーナー、コンデナスト、ハーストなど。アップルの態度豹変の背景には、今年後半に向けてライバル他社から相次ぎ発売される類似商品の存在がありそうだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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