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なけなしのカードを切らされた気の毒な日銀
中央銀行が金融緩和競争の犠牲になるリスク

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第146回】 2010年10月12日
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動きが鈍い日銀が一転、満額回答を
円高への歯止め効果はどれほどか?

 10月5日、日銀は金融政策決定会合で、政策金利を実質的にゼロにし、不動産投信(ETF)などの金融資産を5兆円まで買い取る基金(ファンド)を設定することを決めた。

 この決定は、市場の事前予想を上回る“満額回答”だったこともあり、株式市場は大きく反発し、為替市場でも一時ドルが84円近くまで買い戻されることになった。

 今まで、「動きが鈍い」などと批判されてきた日銀が、今回市場の期待を上回る回答を行なった背景には、円高傾向に歯止めをかける狙いがある。米国が金融政策を緩和するごとに、為替市場ではドルが売られ、円高傾向が進行している。

 そうした為替市場の動きに歯止めをかけるために、日銀は11月2日、3日に開かれる米国のFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される前に、機先を制して金融緩和を進めざるを得なかった。逆に言えば、日銀はそこまで追い込まれていたということだ。

 とりあえずは奏功したように見える日銀の対応には、いくつかの問題点がある。

 まず、本来の目的である円高の歯止め効果だ。政策が発表された翌日には、一時82円台にまで円高が進んでいる。その意味では、効果は限定的だったことになる。

 また、今回の政策発動で、日銀の政策余地が一段と狭まった。今後、何か不測の事態が発生した場合に、日銀が切れるカードがほとんどなくなった。それは、日銀にとってもわが国経済にとっても、大きなリスクであることは間違いない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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