私たちが思っている以上に、仕事上のちょっとした工夫が、成果や評価に大きな差をうんでいた?!世界一のコンサルティングファームで世界7ヵ国のビジネスに携わった著者が、社内外の“できる人”たちの仕事の鉄則をまとめた翻訳書『47原則 世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』(原著タイトル“THE McKINSEY EDGE”)より、今日からでも役立つ成功原則の一部を紹介していきます。
今日のお題は「自分の目標となるロールモデルをみつけよう」。「こんなとき、あの人ならどうするだろう?」と思えるロールモデルがいると、特にコミュニケーションや意思決定で自分の視野を広げることができます。しかも、ロールモデルはスキル別に十数人想定するといいとか。そのわけは?

 「マービンならどうするだろう?」

 これは、マッキンゼーのコンサルタントがよく使っていた言い回しです。「マービン」はマッキンゼー創業時のマネージング・ディレクター(取締役)だった故マービン・バウアー(1903〜2003年)のことです。マッキンゼーの価値だけでなく、今日の経営コンサルティング業の基盤を築きました。

 マービンはロールモデルを持つことを強く提唱していました。先ほどのように自問するのは、プロジェクトがクライアントにとってためになる変化や十分なインパクトをもたらさない、あるいは、ある行動が特定の人物だけに利益を与え、社会の大義に反するとコンサルタントが判断した場合でした。マッキンゼー時代には、インパクトの不足を理由にクライアントとのプロジェクトが終了したり、却下されたりする場面によく遭遇しました。

 大富豪の実業家で飛行家のハワード・ヒューズの依頼に対し、マービンが「あなたには経営スタイルと組織を変える意思がない」という理由ではねのけたことは、コンサルタントなら誰もが知っている有名な話です。

 多くのコンサルタントは、仕事を教えてもらい、親のように慕う人物やロールモデルを尊敬しています。マッキンゼーの理念は「技の熟練」に近いので、コンサルタントはルールを破って罰を受けることを恐れるより、良い模範となることに価値を感じます。

 また、ロールモデルを念頭におくことは、チームやクライアントへの対応、上司との会話を含め、幅広い物事に良い影響を与えます。特にコミュニケーションや意思決定に役立ちます。

ロールモデルはスキル別にそれぞれ捜そう。例えば、「小さな会議ではAさんのように、大きな会議ではBさんのように振る舞おう」というふうに。

 例えば、上司に許可を求めるメールを書くときは、短いながらも説得力をもたせたいものです。だからメールを見直すときは、一歩下がってただ第三者の視点に立つのではなく、自分の尊敬するシニア・リーダーになったつもりで読み返してみましょう。

 あのリーダーならどのように手紙を書くだろう?
 どんな言葉を選ぶだろう?
 もっと間接的、あるいは直接的に書くだろうか?

 そして、さらに一歩下がってこう自問しましょう。
「待てよ、そもそもメールを書く必要があるのか?電話で済ませるか、オフィスの外で聞いたらどうだろう?」

 このように受け手の立場に立つことは、コミュニケーションを最も効果的にします。ロールモデルを使うことにより、「メールの内容は適切だろうか?」という視点から「メールを書くべきだろうか?」という視点に移行することができました。私も含めて、人間はとかく狭い枠組みで物事を見る傾向があります。ロールモデルはこの狭い枠組みを取り払い、全体像を見せてくれます

 だからこそ、「少数の万能モデル」ではなく、場面に合わせてさまざまなロールモデルを想定しましょう

 例えば、私はテニスが好きです。テニスをしているときロールモデルにするのは、職場の同僚や上司ではなく、コーチや高校時代のライバル、ひょっとすると憧れのロジャー・フェデラーかもしれません。少しマニアックにいえば、ショットの種類ごとに特定のロールモデルを割り当ててもいいでしょう。高校時代のライバルのようなバックハンド、コーチのようなボレー、ロジャー・フェデラーのような試合運び(できることなら!)というふうに。

 仕事でも同じことができます。プレゼンなら「小さな会議ではAさんのように、大きな会議ではBさんのように振舞おう」というふうに細かく分けて想定してみてください。別々のスキルには、それぞれ別のロールモデルが必要です。あなたのロールモデルの殿堂には、各スキル別に少なくとも十数人を迎え入れましょう。