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日本に巣食う「学歴病」の正体

学歴の高さとハングリー精神が反比例する謎

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第29回】 2016年8月2日
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中小企業・自営業の経営者の学歴に、高卒、無名大学・難易度の低い大学の出身者が多い理由とは

 今回は、中小企業や自営業などの経営者らの学歴に詳しいコンサルタント・栢野(かやの)克己さん(57)を取材した際のやりとりを紹介したい。主に2つの点を中心に尋ねた。1つは中小企業や自営業などの経営者らの世界にも「学歴病」は浸透しているのか、もう1つは大企業に勤務する会社員はなぜ学歴に強い影響を受けているのか、ということだ。

 予めお断わりしておくが、記事の最後で紹介したエピソードについては、今もその事実関係は不明であり、栢野さんもまた把握できていない。しかし、学歴を考える上で何らかの参考になるかもしれないと思い、あえて記事の中に盛り込んでみた。

 栢野さんは、大ベストセラー『小さな会社☆儲けのルール―ランチェスター経営7つの成功戦略』の著者でもある。福岡を拠点に全国で、主に個人事業主や中小・零細企業の経営者を対象にした講演や勉強会を続けていることで知られる。


自営業・中小企業経営者の最終学歴は
高卒、無名大学、難治度の低い大学

筆者 以前、自営業や中小企業の経営者の最終学歴を調べたことがあるようですね。

栢野 私はこの十数年、福岡や全国で自営業や中小零細企業向けに講演や勉強会を約2000回してきました。

 多くの社長と接しながら学歴を調べたのです。彼らから経営の相談を受けたり、講演やセミナーに招いていただいたり、本や記事を書くために話をうかがったりしたときなどに、ヒアリングをしてきました。

 最終学歴で最も多いのは、高卒です。その次に、いわゆる無名大学。その後に難易度の低い大学と続きます。難易度が高い大学は少数派ですね。大企業サラリーマンは高学歴が多いですが、中小零細の独立起業では逆なのです。

 私の地元・福岡市では、旧帝大の1つである九州大学(以降、九大と表記)の難易度が圧倒的に高い。九大を卒業すると、多くは大企業や公務員になります。そこで活躍し、ある程度までは出世(昇格)もするから、辞める人は少ない。ましてや、独立して自営で開業したり、会社の起業をしたりするなんて、めったに聞きません。

筆者 ここ十数年は、一定の入学難易度以上の大学を卒業した人が、会社を創業することが増えているように思います。

栢野 IT系ベンチャー企業ではその傾向がありますが、創業・起業の中で大きな流れにはなっていないと思います。

 私の地元でも、ごく一部に例外はあります。九大を卒業し、一時期小さな会社で経験を積み、その後独立し、会社を興した女性がいます。ぐんぐんと業績を拡大させ、地元では知られた人です。私が見てきた中で言えば、「九大卒」でも創業の叩き上げで成功した人は本当に少ない。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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