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日本に巣食う「学歴病」の正体

なぜ創業経営者は低学歴なほど成功しやすいのか?

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第22回】 2016年6月14日
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ベンチャー企業を創業し、一定の成功を掴むのは難しいことだが、ベンチャー企業の創業者は、学歴や生い立ち、家庭環境などに強い劣等感を持つ人ほど成功しやすいという話をよく聞く

 今回は、ベンチャー企業(正社員数400人)の執行役員に「創業経営者と学歴コンプレックスの関係」について話を聞いた。

 取材した役員は、現在40代後半の男性。20代後半に金融機関からベンチャー企業に転職した。現在までの約20年間で3つのベンチャー企業で働いた。営業に一貫してかかわり、多くの経営者と接してきた。

 ベンチャー企業を創業し、一定の成功を掴むのは難しいことだ。過酷な道のりであり、多くの人が挫折する。そのとき、「学歴や生い立ち、家庭環境などに強い劣等感を持つ経営者ほど、苦境を乗り越えることができる」と、筆者はこれまでの取材で度々耳にしたことがある。

 果たして、それは本当だろうか。事実であるならば、なぜなのか――。そうした問題意識を持ち、取材を試みた。取材対象者を仮にA氏とし、インタビュー形式でお伝えする。


自己中心的で自己顕示欲が強い
成功したベンチャー創業者の共通点

ベンチャー企業の執行役員、A氏

A氏 私が前職で仕えた社長(50代後半)は創業者です。その後退職し、入社した今のベンチャー企業の経営者(40代前半)も創業者。この十数年で、営業で知り合ったベンチャー企業の経営者のほとんどが創業者です。合計で500~600人にはなるかと思います。会社を上場させた方もいるし、倒産させて行方不明になったと噂される人もいます。彼らの年齢は30代後半から40代半ばが多く、大半が男性。女性は依然少ないですね。

筆者 知り合ったベンチャー企業500~600人の7~8割に共通しているものはありますか。

A氏 世代により多少の違いはありますが、性格や気質は似ています。自己中心的で、自己顕示欲が強い。常に自分が組織の中心にいないと、気が済まない。側近や部下には、イエスマンであることを求める。逆らったり不満を言ったりする者を許さない。お金や地位、権力、権威、名誉などへの執着が、平凡な会社員よりははるかに強い。それくらいでないと、ベンチャー企業のトップとして、成功はまずしませんよ。

筆者 生まれ育った家庭や環境などは、どうでしょうか?

A氏 全員の生い立ちまでは正確には把握できていませんが、成人するまでの間に、何らかのトラウマ(心の傷)を持った人が少なくないことは間違いないと思います。たとえば、親が離婚したり、死別したり、家庭内不和が繰り返されていた家庭で生まれ育ったケースです。だから、彼らは猜疑心が強い一面があるかもしれませんね。人を疑うからこそ、成功できるとも言えるとは思います。

 今の30代半ばは、やや違いますね。挫折や屈折したものはなく、軽い思いで起業したりしています。その柔軟さが、厳しい時代を生き抜くことができる理由の1つなのかもしれません。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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