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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機
【第23回】 2016年8月5日
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齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

IoTはまだ「グリーンフィールド」
想像力の豊かな企業が勝つ

英ARMを電撃買収した
孫社長の交渉術はさすが!

ソフトバンクの自社イベント「SoftBank World」でARM買収を語る孫正義社長
Photo:DIAMOND IT & Business

 ソフトバンクによる英国の半導体設計大手、アーム・ホールディングス(ARM)の電撃買収が大きな話題を呼んでいます。約3兆3000億円という投資額は、日本企業の海外M&Aとしては過去最大規模です。ARMはスマホに搭載される通信用半導体の回路設計で約95%のシェアを握る独占企業。半導体メーカーに回路設計図を提供し、1個売れるごとにライセンス料を取るビジネスで儲けています。

 孫正義社長は「10年ほど前からARMに目をつけていた」という話もありますが、予想外の英EU離脱ショックで大きく円高に振れたタイミングで素早くARMを買収した交渉術はさすが! もう、脱帽ものです。

 交渉開始から合意までわずか2週間だったといいますが、普通の日本企業だったらあり得ない話ですね。経営会議やミーティングをセッティングするだけでも2週間くらいかかってしまいます。

 さらにスゴイのは、ARMの買収は単純な投資ではなく、ソフトバンクの事業の方向転換を図るためだということです。ソフトバンクグループは創業以来、節目ごとに方向を変え、新事業をテコに業績を伸ばしてきました。現在の通信事業も将来性を考えると、今が方向転換の時期と判断したのではないでしょうか。

 私は、この連載でも紹介しましたが、「半導体の性能は18~24ヵ月で2倍になり、価格は半分になる」というムーアの法則で世の中が変化しているというレクチャーをよくやっています。通信事業も例外ではなく、半導体やセンサー、ストレージ事業などと同じように単体のビジネスはますます厳しくなるでしょう。通信スピードはどんどん高速化し、いまやかけ放題は当たり前。そんなことではもう勝負できません。ライバルのキャリアも多く、利益を得るのが難しいビジネスになっているのです。

 実際、孫社長自身も記者会見で「通信キャリアは(コンテンツ提供者に通信インフラを提供するだけの)土管化が進む」と話しています。

SPECIAL TOPICS

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。

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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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