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三谷流構造的やわらか発想法

自動運転でヒトの脳はパニックを起こしやすくなる

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第144講】 2016年8月4日
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自動化におけるmisplaced focusを避けるにはメンタルモデルを構築せよ??

 最近、どこにいっても「自動運転」の話で持ちきりです。

 ドライバーの安全運転を支援する先進運転支援システム市場が、2022年には1兆円を突破する(富士キメラ総研調べ)だの、ドライバーが運転に全く関与しない完全自動運転(レベル4)の実用化は2030年より早まりそうだ(*1)、だの。

 でも、そのとき「ヒト(搭乗者)」はどうなるのでしょうか。その精神的側面に焦点を当てた議論が、盛んになってきました。

 ジャーナリストのチャールズ・デュヒッグ(*2)WIRED記事でこう言っています。

 ・自動化された環境の中で脳はリラックスしている
 ・だからこそ緊急時にはストレスが急激に高まり「コグニティヴ・トンネリング(cognitive tunneling)」の状態になる
 ・注意範囲(attention span(*3))が非常に狭くなり、限定的なモノや問題にのみこだわる(misplaced focus)ようになって対応に失敗する
 ・解決策は「メンタルモデル(mental model)」を構築することである。具体的には、今日の予定や対処法・考えなどを語り、それへの異論を聴くことだ

 専門用語や最後の部分が「??」ですが、つまりは、「自動化の時代」においてヒトは緊急時に、注意範囲を狭めがちなのでそれを広く保つ習慣を持て、ということなのです。

 ちょっと解説しましょう。

重大事故は、注意散漫でなく(誤った)注意集中によって起こる

 警視庁の統計によれば、交通死亡事故の原因は、

 ・1位:漫然運転17.9%
 ・2位:脇見運転14.0%

 です。そしてこの「漫然運転」なるものは、居眠り運転、考えごとをしながらの運転なので、居眠りを除くと、最大の死亡事故原因は実は単純な「脇見」と呼ばれるものなのです。

*1 2016年5月20日に発表された「官民ITS構想ロードマップ2016」では「無人自動走行移動サービス(ロボットタクシー)」が2020年(地域限定)に、「完全自動走行システム」が2025年目途に実用化とされた。
*2 「The iEconomy」で2013年にピューリッツァー賞を受賞。
*3 日本語版では「集中力」と訳されているが、attention spanは注意が及ぶ時間や対象範囲を指す。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

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